RaspberryShake の変更点


#author("2024-03-08T05:21:52+09:00","","")
#author("2024-03-08T05:24:24+09:00","","")
*Raspberry Shake 地震計を使ってみた (2022/04/26)
#image(https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~masami/images/Raspberry_Shake_running.png,center,40%)
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Raspberry_Shake_running.png,center,40%)
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**Raspberry Shakeとは
 数週間前にScienceを読んでいたら、Raspberry Piを使った簡易な地震計Raspberry Shakeを使った地震研究について書かれている論文があり、それで興味を持ってRaspberry Shakeを少し調べてみた。パナマにある会社が販売していて、教育目的等で欧米ではかなり使われている(現在世界中で2000超のステーションがオンラインで接続されている)。上下振動のみの1D、3方向取れる3D、さらに上下+3軸加速度センサーの4D(強振用), ハイドロフォン(気圧計)付きなどの種類がある。完成品もあるが、Raspberry Piが付いてこないキットもある。[[こちら:https://raspberryshake.org/]]がRaspberry Shakeのwebサイト。Raspberry Pi 4B本体を既に持っていることもあって、3Dキットを購入してみた。安いのではセンサー(geophone)1個と計測用ボードのみのセットもある。なお、使うRaspberry Piは3 model B (以下3B), 4 model B(4B)のようである。geophone1個のものはZeroでも使えると書いてる(しかしZeroにはLANコネクターがない…)。現在Raspberry Piは世界的に品薄となっているので、Raspberry Piを持ってない方は完成品を買う方がいいのかも。円安もあり、3Dはかなり高価な感じがした。関税も取られた。1Dのキットにすればよかった…
 なお、Raspberry Piとは小型で安価なシングルボードコンピュータで、日本ではラズパイと呼ばれている。OSはLinuxをベースにしたもの。色々な種類があるが、Raspberry Shakeで使うのはRaspberry Pi 3B、3B+か4Bになる。さらに古いModel Bでも使えるらしい。完成品には3Bがついているようだ。Raspberry Shakeの基板上にI/Oコネクタがあるので、このコネクタを使ってさまざまな機能を持つ別の基板を上に重ねていくことができる。Raspberry Shakeの場合は、geophoneからの電圧を増幅してデジタル化する基板が付いてくるので、それをRaspberry Shakeの上に重ねる。
**Raspberry Shakeの組み立て
#image(https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~masami/images/Raspberry_Shake_3Dkit.png,right,40%)
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 注文して10日ほどでDHLで届いた。右の写真が届いたもの一式。早速組み立て。組み立て作業自体は[[こちら:https://raspberryshake.org/help/]]から辿れるビデオを見て進める。比較的簡単な作業だけ。ただ、ビデオではgeophoneは既に取り付け済みで始まっているが、私のは取り付けてなかったので、まずはアクリルの部品でgeophoneを取り付けた。3Dの場合は上下、南北、東西の3つのgeophoneがあり、基板の配線端子部分にZ(上下), N(南北)とか書いてあるので、それと対応させてやる必要がある。
 持っていたRaspberry Pi 4Bに、部品と一緒に送られてきたMicroSDカードを挿す。ここにOSと必要なソフトが入っている。Raspberry Piをアクリル板に固定して、その上にRaspberry Shakeの基板を重ねる。必要なネジやスペーサーネジは同封されている。スペーサーネジが3種あって、どこにどれを使うのか迷うが、中くらいの長さがRaspberry Piの固定、短いのがその上へRaspberry Shake基板の固定で、さらにその上に一番長いものを使う。geophoneからの配線をうまく逃がさないと、Raspberry Shake基板がRaspberry Piのコネクタに刺せないので注意する。ビデオとネジの場所がちょっと変わっていたので、現実に合わせて適当に変更した。水平出しのネジが3個あるので、それをアクリル板にねじ込んで、水平出しをする(小さい水準器がついている)。後はアクリル板を組み合わせて完成。
 起動させるには有線LANケーブルとRaspberry Piの電源が必要(モニターは不要)。一番上の写真は3Dキットを組み立てて、電源、ネットワークを繋いだ状態。電源入れると自動的にソフトが起動する。Raspberry Pi自体はwifiも使えるが、wifi使うとノイズが大きくなるために有線LANがデフォルトとなっているそうだ。私の場合は部屋にLANコンセントがないので、部屋に置いているwifiステーションの有線LAN端子に接続した。起動直後はupdateをしているので、電源入れて数分後にPC(同じwifiステーションに接続)のブラウザーからhttp://rs.local/にアクセスすると設定画面が出てくる。これが出ればちゃんと動いている。
 Raspberry ShakeはRaspberry Piにモニターを繋いで設定したりデータを見たりするようにはなってない。ネットワークを使って、webブラウザーか、PCからsshでloginして設定やデータを見るようになっている。
 注意点としてはshutdownする時はいきなり電源を切るのではなく、http://rs.local/のActionのActionからshutdownボタンをクリックする必要がある。または、sshでloginしてからshutdown。そうしないとSDカードの内容が壊れる可能性がある。
**Raspberry Shakeの使い方
#image(https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~masami/images/Raspberry_Shake_map.png,right,40%)
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Raspberry_Shake_map.png,right,40%)
 http://rs.local/にログインして、名前や地震計の場所を登録する(後で出てくるShakeNetではプライバシー保護のため、位置情報をワザと数100 mずらせて表示する)。地震計取得のデータを外部に公開してもよい場合は、ShakeNetにデータを送ることを承諾する(しなくてもRaspberry Shakeを使うことはできる)。ShakeNetは世界中に散らばるRaspberry Shakeのデータを集めて公開しているサイトで、個々の地震計のデータを見ることができる。これはRaspberry Shakeユーザー以外も自由に見ることができる。
 ShakeNetへの申請から24時間以内にShakeNetに登録される。私のRaspberry Shakeも登録されていて、見ることができる(右の図)。Raspberry Shakeステーションには装置固有の名前が付けられていて、私のはR28BAである。ShakeNetの地図では鳥取県に3Dと表示されているのが私のRaspberry Shake。日本では20台ほど登録されている。個々のステーションの3D等のアイコンをクリックすると、地振動のデータを見ることができる。24時間データを表示させている時に、その画面で地震らしい波形部分をクリックすると拡大されて、さらにスペクトルやスペクトグラムを見ることができる。なお、ShakeNetはFirefoxでは表示がおかしくなることがあった。Safariは少しまし。Chromeが推薦されている(追記:最近ではFirefoxで特に問題ありません)。ShakeNetのdataviewでは最新の地震も地図上にプロットされているので、その地震の近くのステーションをクリックして、24時間データviewで見ると、地震の時の波形を見ることができる。同定されている地震は自動的にその位置がviewに示されている。その辺りをクリックすると拡大させて、スペクトルグラムを見ることもできる。
 ShakeNetという専用アプリを入れると、スマホでもデータを見ることができた。
 最初居室の机の上に置いているがノイズレベルが高い。実験室の頑丈の机の上に置いたらノイズレベルが下がった。現在は実験室の床に置いている(3階)。実験室のドアを開け閉めすると振動が拾われてる。もう少し安定したところがいいのだけど。http://rs.local/で、Raspberry PiのCPU温度をモニターできるが、60度台と結構高かった。ファンを入れたいところだが、ノイズの原因になりそう。冷却効率を良くするためにケースの側板の1つを外した。場所を変えたこともあり現在は50度台になった。FAQを読むと70度くらいまでは大丈夫なようだ。また、http://rs.local/に入った時の表示からIPアドレスが分かるので、sshでloginすることもできた(ssh myshake@*.*.*.*)。基本Linuxなので設定変更等は問題なくできそう。
 USGSの開発したSWARMという地震データを解析するソフトが使えるらしいが、まだ試していない。ただこれでできることの一部はDataViewでもできる(スペクトルの表示など)。
**サーバーにつながらないトラブル (2022/05/02)
 別の部屋に移動させようとして固定IPを使う設定などをいじっているうちにサーバーとつながらなくなった。http://rs.local/で元の設定に直してもうまくいかない。RaspberryShakeのフォーラムでも何人か同じトラブルを報告している人が何人かいた。それらで提案されている解決法のいくつかを試したがうまくいかなかった。しかし、/etc/dhcpcd.confの設定の問題という話があったので、sshでloginして、dhcpcd.confの最初の方にある固定IPアドレスが設定されている部分を全てコメントアウトして、再起動(sudo reboot)した。しばらく放っておいたらサーバーと繋がっていた。しばらくShakeNetのサーバーと切れていたからか、StationViewからこのRaspberryShakeが消えてしまっていたが、数時間したらまた出てきた。現在は正常に動いている。固定IPの設定をして、後でそれをやめてもそれが反映されずに存在しない固定IPと接続しようとするのが原因かもしれない。
**実際の地震観測 (2022/05/04)
#image(https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~masami/images/earthquake-20220502-Kyoto.png,right,33%)
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/earthquake-20220502-Kyoto.png,right,33%)
 ShakeNetに復帰してから数日の間にいくつか比較的近くで地震があった。早速、DataViewを使ってデータを見てみた。最初に観測できたのは5月2日22:21:04の京都南部の地震で、モーメントマグニチュード4.1、深さ15 kmのものである。これはこちらでは全く気づかなかった。この時はまだ居室の机の上に置いていたので、上下動成分のノイズが大きいため、水平動の地震計記録を右に示している(上下動成分でも明らかに地震だとは分かるが)。P波に続いて振幅の大きなS波が到達したことが明瞭に記録されていた。P波とS波の到着時間差は18秒くらいで、大森公式で8 km/sとして計算すると震源まで144 kmとなる。実際には震源はもう少し遠くて158 km距離があった。ちょっと遠いので大森公式で8 km/sよりも大きな値を使った方がいいのだと思う。到着時間は20秒ほどかかっているので、P波速度を8 km/sとしたら、160 kmとなるのでまあ合っているようだ。
#image(https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~masami/images/earthquake-20220503-Tottori.png,right,33%)
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/earthquake-20220503-Tottori.png,right,33%)
 2022/05/03午後15:50:40に鳥取で地震があった。モーメントマグニチュード4.1で、深さ8 km。当時屋外にいたが、私も感じた。NHKの速報ではこちらの震度は2となっていた。スマホのアプリでもRaspberryShakeの波形を見ることができるので、すぐにRaspberryShakeの記録を見ることができた。右にこの地震の記録を示している。これも水平動(NS)。先の京都の地震と比べると近いので、振動がかなり大きくなっている。P波とS波の時間差は1.5秒くらいなので、震源までの距離は10 kmくらいとなる。P波の到達時間からもそれくらいの距離が得られる。余震と見られるものもその後数回観察された。
#image(https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~masami/images/earthquake_20220526_Peru_M7.2.png,right,33%)
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/earthquake_20220526_Peru_M7.2.png,right,33%)
 非常に遠い地震もマグニチュードが大きいと検出できる。右は2022/05/26のペルーの大きな地震(M7.2)の例で十分観察できている。やはり低周波数成分が大きい。角度で149度くらい離れており、走時曲線を参考にすると、最初に来ている波はPKIKPと考えられる。これはマントルー外核ー内核ー外核ーマントルと通ってきたP波となる。
 現在はスマホのShakeNet(これは登録必要)を時々チェックして、近くで地震が起きたか、遠くで大きな地震が起きた場合は、同じくShakeNetで自分のRaspberryShakeの地震波形をチェックして、検出できている場合は、X(twitter)でその波形を流している。結構、NHKの地震速報等で報告されていない地震が検出される。地震速報は比較的マグニチュードが大きくても、深い地震で震度ほぼゼロの地震や日本の陸地から離れている地震で津波の可能性のないものは扱わないためのようだ。