QuickPress の変更点


#author("2024-07-11T10:53:01+09:00;2024-03-09T10:48:06+09:00","default:masami","masami")
#author("2024-07-11T10:58:44+09:00;2024-03-09T10:48:06+09:00","default:masami","masami")
*Quick_Pressについて 
(2012/03/16 created)(2024/07/11 last updated) 
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/QuickPress2.png,center,80%)
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/QuickPress2.png,center,70%)
--&color(red){ここで述べているQuickpressは高圧装置で、ソフトウエアではありません。};
**近況
-(2024/07/11) 今日から1週間くらい使う。
-(2023/07/12) [[使用マニュアル:https://mkanzaki.sakura.ne.jp/pdfs/QuickPress_ManualJ.pdf]]をアップデートしました。 [[英語版:https://mkanzaki.sakura.ne.jp/pdfs/QuickPress_ManualE.pdf]]も作りました。
-(2023/07/08) 今年のインターンプログラムでも使ってます。
-(2022/09/20) サマープログラムの関係で、最近この装置を使ってよく実験してます…
-(2020/06/15) この装置の圧力校正をルビー蛍光法で測定する試みをしてます。[[ピストンシリンダー装置のその場圧力測定]]にその内容と最初の結果を書きました。
-(2018/06/16) 装置を一人で第3研究棟3Fへ移した(小型のQuick_Pressならでは)。上記写真を移動後の最新のものに変更した。科研費シールも追加。
-(2017/09/11) Quick_Pressを元々考案し、販売もしていたJohn Holloway教授が9/6に亡くなられました。私は短い期間でしたが、Holloway教授のところでポスドクをしたことがあります。ご冥福をお祈りします。既に経営からは退いていたので、装置は今後も販売されると思います。
**概要 [#x685772a]
 エンドロード(シリンダー締め付け)なしのピストンシリンダー高圧装置(Quick_Press)が新しく実験室に入りました(購入したのは薛教授)。1/2インチ用のシリンダーとピストンが使えます。この1/2インチの場合、常用では圧力2 GPaまでです。この装置はJohn Holloway教授 (Arizona State University)がピストンシリンダー装置をコンパクトに改良した装置で、色々と工夫がなされており、卓上にも置けます。上の写真の卓上左側の装置が本体。上に乗っている黒いものは電源トランス。左側には実験後の高圧セル引き抜き用のラムがあります。机の下にあるのは冷却水循環装置です(これは日本製でこちらで準備)。普通のピストンシリンダーでは、シリンダー類はいちいちプレス本体から出し入れする必要がありますが、この装置では回転する台に乗っているので、この作業は必要なく、試料引き抜き時にも回転するだけで済みます。
 エンドロード(シリンダー締め付け)なしのピストンシリンダー高圧装置(Quick_Press)が新しく実験室に入りました(購入したのは薛教授)。1/2インチ用のシリンダーとピストンが使えます。この1/2インチの場合、常用では圧力1.5 GPaまでです(2 GPaは要相談)。この装置はJohn Holloway教授 (Arizona State University)がピストンシリンダー装置をコンパクトに改良した装置で、色々と工夫がなされており、卓上にも置けます。上の写真の卓上左側の装置が本体。上に乗っている黒いものは電源トランス。左側には実験後の高圧セル引き抜き用のラムがあります。机の下にあるのは冷却水循環装置です(これは日本製でこちらで準備)。普通のピストンシリンダーでは、シリンダー類はいちいちプレス本体から出し入れする必要がありますが、この装置では回転する台に乗っているので、この作業は必要なく、試料引き抜き時にも回転するだけで済みます。
 [[Depths of the Earth:https://www.depthsoftheearth.com/]]というHolloway教授が作った会社が製作してます。Holloway教授は大学からも会社からも既に引退していて、Dr. Tracy Paulが現在は販売してます。
**装置の特徴 [#l60c6dd1]
 普通のピストンシリンダー装置ではシリンダーの締め付け用の加圧機構があり、ピストンを押すための別途の加圧系が複合したプレス(Kennedy式)を使うのが一般的です。しかし、締め付け用の方がラムもより大きなものが必要で、かなり大掛かりなものとなります。当然、卓上には乗りません。この装置ではシリンダーの締め付けはしないことで、発生可能な圧力は少し下がりますが、装置自体は非常にコンパクトになります。
 普通のピストンシリンダー装置では、シリンダーなどの重い部品を手で持ち上げて、プレスの懐や別に設置されている試料押し出し回収用のプレスに移動させるなど力仕事が必要となりますが、この装置ではシリンダーなどを持ち上げる必要がなく、試料押し出しプレスへは受け台を回転するだけでいいように工夫されています。
**装置の状況 [#p185878b]
 立ち上げは終了し、現在は合成実験などに使用してます。
-[[使用マニュアル日本語版:https://wmkanzaki.sakura.ne.jp/pdfs/QuickPress_ManualJ.pdf]]
-[[English manual:https://mkanzaki.sakura.ne.jp/pdfs/QuickPress_ManualE.pdf]]
 防御用のポリカーボネート板を自作して、設置しました(2014 9/10)。2面のみです。下の写真がその状況。&color(red){加圧時と試料押し出し時に必ず設置して、板で保護されている側でハンドプレスなどの作業をしてください。};
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/shield.png,center,80%)
 高圧セルは塩(塩化ナトリウム)のスリーブを使った高圧セルを使います。温度により厚さの異なる2種類の塩スリーブを使い分けます。厚い方はパイレックスガラスなしで塩スリーブのみとなります(1000 ˚C以下で使用)。実験のためには、塩のスリーブを押し出し用ラムを使って予め準備しておく必要があります。また、試料周りのスリーブはMgOセラミックスなどで自作する必要があります。塩化ナトリウムの粉がプレス付近に散らばるために、実験後はきれいにすること(自分に言う)。また、治具をさびさせないこと(これも自分に言う)。
 厚い塩化ナトリウムのセルの場合、1 GPaだと900 ˚Cを越えた辺りで、温度が上がらなくなります。塩化ナトリウムが融けるためだと思われます。1 GPaで1000 ˚C必要な場合は、パイレックスを使ったセルにしてください。
 パイレックスと塩化ナトリウムのセルの場合、1200 ˚C以上の実験でヒーターが不安定になります。調べるといくつかのラボでは、ヒーター及びパイレックスガラス変形(剪断)を少なくするために、予め隙間を用意している。たとえばBoettcher et al., Rev. Sci. Inst., 52, 1903 (1981); Pickering et al., Am. Mineral., 83, 228 (1998).その後、色々試したが、特に何もしなくても1500 ˚Cくらいまでは上がるようになった。
-塩化ナトリウム以外のセルのテスト
--融点はフッ化カルシウムが高い。
--薄いスリーブの場合(パイレックス使用)、フッ化カルシウム単体ではスリーブ作成が難しかった(取り出し時に割れる)。塩化ナトリウムとフッ化カルシウムを重量で1:1混合物の場合をテスト。この場合は薄いスリーブでも作成可能であった。
--厚いスリーブの場合(パイレックスなし)、フッ化カルシウム単体でも何とかスリープは作成可能。ただ取り出し時に端がかける。また、1度では難しいので、半分の長さで2個作るようにした。600 ˚C, 4時間焼く。加熱テストの結果は、塩化ナトリウム+パイレックスの時よりも電力を必要とするが、ヒーターの不安定性は抑えられていた。しかし1300 Cでは電力が水冷の限界に近いようだ。断熱性のよいスリーブが必要。
--Walker教授らが使っている炭酸バリウムの場合は、厚くてもスリーブ作成は難しかった。何らかのバインダーが必要。
-塩セルはtalcセルよりも試料における酸素分圧が低く、メルト中の炭酸塩からグラファイトが生じる。これを改善するために塩セルに工夫を試みている。
--塩スリーブにMg(OH)SUB{SIZE(9){2}}を混ぜる。これは脱水により水が放出され、酸化的になることを期待。Mg(OH)SUB{SIZE(9){2}}を5 wt%添加で試す。成形性は塩単体よりもいい感じ。1度実験を行なったが、試料では炭酸塩からグラファイトが生じていた。
--Mg(OH)SUB{SIZE(9){2}}を5 wt%に加えて、10 wt%のFeSUB{SIZE(9){2}}OSUB{SIZE(9){3}}を添加して酸化的な環境にする。スリーブの成形は問題なし。赤いスリーブとなった。
--FeSUB{SIZE(9){2}}OSUB{SIZE(9){3}}のディスクを作って試料の近くに置く。これはFeSUB{SIZE(9){2}}OSUB{SIZE(9){3}}のみで、塩のロッド用の治具で作成。成形性は問題なし。ある程度は効果がある。
--熱電対は最初よく切れたが、TC保護管の長さを少し短めにするとほとんど切れなくなった。
**これを使った成果 [#ca6c3550]
**この装置を使った成果 [#ca6c3550]
-Xue, X., Kanzaki, M, Floury, P., Tobase, T. and Eguchi, J. (2018) Carbonate speciation in depolymerized and polymerized (alumino)silicate glasses: Constraints from SUP{13}C MAS and static NMR measurements and ab initio calculation, Chemical Geology, 479, 151-165. https://doi.org/10.1016/j.chemgeo.2018.01.005 COSUB{2}を含むガラスの合成に使用している。
**温度制御装置 [#rd1857a2]
 温度制御装置もDepthから買ったものを使ってますが、Omegaの温度コントローラーがいまいち使いづらい。交換しなきゃと思いながら、ずっと使っています。
**シュウ酸銀の作り方 [#w7f699c7]
 シュウ酸銀(AgSUB{2}CSUB{2}OSUB{4})は高温で二酸化炭素と銀に分解するため、高圧実験で二酸化炭素の源として使われます。試料室内では、シュウ酸銀はPt箔などに包んでおき、試料との直接の接触は避けるようにする。もっとも上記の論文の時はちょっと試して、結局は炭酸塩で二酸化炭素を導入しましたが。
 手袋等必要な安全対策をする。
-シュウ酸第二水和物を水20 mlに1.4グラム溶かす。少し時間がかかるが全部溶ける。
-硝酸銀1グラムを加える。すぐに白い沈殿ができる。水溶液として加える場合はいいが、直接加える場合は白濁して全部溶けたのかよく見えないが、溶解は早い。
-沈殿物を濾過する。余分なものを無水アルコールで流す。
-乾燥させる(140 ˚Cで激しく分解するので乾燥温度に注意)。フィルターから分離する。
-注意
--光、摩擦でも分解するらしいので、保存に注意する。保存容器をアルミ箔で覆っておく。
--フィルターと分離する時にこすり取ると、繊維などが混入して、実験に使用できなくなる。
--140 ˚C付近で白煙をあげて急激に分解する。乾燥減量で純度を見積もる時は注意が必要。白金チューブ等に少量を封入しておいて、分解後にチューブに穴を開けて二酸化炭素を逃がし、減量を測定する。
--なおシュウ酸と硝酸銀は劇物となっており、管理対象ですので、使用した場合は日時、使用量を専用のノートに記載します。専用保管庫に鍵をかけて保存します。
--実際に使ってみてNMR向け試料合成にはちょっと難しいかなと思いました。
-最近、COSUB{2}入りの天然メラノフロジャイトを調べていたのですが、これもCOSUB{2}ソースとして使えるのではないかなと思いました。もちろんSiOSUB{2}の一部をこれで置き換えることになりますが、シュウ酸銀と違って銀が残らない利点があります。