DTA試作 の変更点


#author("2024-03-08T17:42:27+09:00;2024-03-08T17:39:47+09:00","default:masami","masami")
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**前書き [#x600acbb]
-高圧合成試料の(常圧)高温での相転移を調べるためにDTAを自作した。テストのためにCsNO3や石英の相転移を測定した。
**DTA装置 [#cc1d3b34]
 DTA(differential thermal analysis、示差熱分析)の原理は簡単で、熱電対を2本、サンプルと参照物質用に準備して、電気炉で温度を変化させながらサンプルと参照物質の温度差を見るものである。両者で熱容量がほぼ同じであれば、温度差は発生しない。しかし試料側で吸熱反応や発熱反応があると試料側の温度は参照物質からずれてきて、吸熱または発熱ピークとして観察される。このピークから相転移や融解が検出できる。参照物質には転移などない物質を使う。アルミナがよく使われる。原理は簡単なので自作できる。おかしな話だが、マルチアンビル高圧装置を使った高圧DTAはやったことがあるが、常圧で測定するのは初めて。なお吸熱や発熱が非常に大きければ、試料温度だけ測定していても相転移を検出することができる。そちらは加熱曲線法、冷却曲線法と呼ばれる。こちらもマルチアンビル高圧装置で行ったことがある。高圧下で金属の融点を測るのに使えて、圧力校正としても利用できる。
 ニラコで買った銀ブロックに2つ穴をあけて、そこをサンプルと参照物質を入れる場所として、さらに横穴をあけて熱電対を側面から突っ込む。これでDTAのセンサー部分ができあがる。上部の写真が銀ブロック部分を写したもの。よく見ると穴の中に熱電対のジャンクション部分が見える。銀を使うのは熱伝導率がよく、試料等との反応性が低いため。
 他のところで紹介しているように、アジレント(旧HP)の多チャンネルデジタルマルチメーターを使って、RS-232C/USB変換でデータをMacbook Airに取り込む。今回の場合は、参照試料の温度(熱起電力)と参照試料ーサンプルの温度差(熱起電力差)を2チャンネルで取り込む。そのため吸熱反応が起こるとサンプル側の温度が上がらず、差は+側にずれる。電気炉は市販の横置きのチューブ炉を使った。温度制御装置はオムロンのプログラム制御器を使った自作品。加熱は10~20 K/minで測定を行っている。冷却は電気炉や炉心管の熱容量があるので、それほど早くは冷却できない。データ取り込みプログラムはグラフは表示できないが、データをテキストファイルとしてセーブできるので、それを表計算ソフト等で読み込んで処理できる。
 熱電対は最初は0.2 mm直径のR-typeを使った。しかしデジボルの読み取り精度がいまいちでDTAシグナルが弱いので、同じ直径のK-type(クロメル/アルメル)に変更した。同じ温度で起電力は数倍高いのでピークが検出されやすくなるが、安定性や反応性についてはR-typeの方がよい。なお、DTAピークは数マイクロボルトから数10マイクロボルト程度であるので、精度よく測定する必要があるが、ふらつきなどマルチメーターからのデータ読み取りで苦労している。
 試料は白金皿に入れて穴に置き、ジャンクションが皿の底に接触するようにする。白金の皿は、Depth of the Earthという会社が作っているQuick Pressに付属してきた、白金箔からリッドを作る治具(パンチ)がちょうどいい形状の皿を作るので、それを流用して作っている。この実験では10 mgくらいの試料を使うことを想定している。これは結構少ないが、高圧合成試料の測定を考えているためである。参照試料にはアルミナを使う。なお、S/Nを上げるために、皿を使わずに試料で熱電対ジャンクション部を直接埋めることも試している。
**CsNO3の相転移 [#kd3a1519]
 CsNO3の融点はワイヤーヒーターの温度校正でも使っているが、160 ˚Cくらいに固相/固相の相転移がある。これをDTAで測定した。下の図は加熱過程でのDTA測定結果で、吸熱ピークが観察された(上側が吸熱側)。これは白金皿に試料を入れた場合で熱電対はR-typeを使用。CsNO3の転移はピークが大きく観察しやすいが、石英ではこうはいかない。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/DTA-CsNO3.png.png,center,50%)
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/DTA-CsNO3.png,center,50%)
*石英の相転移 [#pa0d1186]
-石英は低温/高温型石英の転移が573 ˚Cにある。しかしCsNO3よりはピークはかなり弱く、R-type熱電対で白金皿を使った場合にはバックグラウンドに埋もれ気味で明瞭には観察できなかった。そこで熱電対をK-typeに変えて、また白金皿を使わず試料を直接熱電対周りに詰めた。そうした工夫によりピークが明瞭に見えるようになった。下の図は冷却過程におけるDTA測定結果で、573 ˚Cくらいにピークが見える。バックグラウンドの傾きと、バラツキを抑えることが今後の課題。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/DTA-qz-cooling.png,center,50%)
*本番 [#f49e0104]
-本来の目的の物質で試したが、転移が全く検出できず。転移での変化が桁違いに小さいようだ。調べると類縁の構造での転移も検出が難しいらしい。