白金管への試料の封入法 の変更点


#author("2024-04-15T08:50:05+09:00;2024-04-15T08:48:57+09:00","default:masami","masami")
#author("2024-05-27T09:04:05+09:00;2024-04-15T08:48:57+09:00","default:masami","masami")
*白金管への高圧実験試料の封入法 (2024/03/12作成)
(2024/04/15: 管が菅になっていたので、直しました )
 研究室で行っている白金管への試料の封入方法を紹介します。
**必要なもの
-白金管(ニラコやフルヤ金属などで購入してます)
-ドリルビットまたはステンレスの棒(白金管内径より少し小さいものと白金管外径より少し大きいものの2つ)
-整形用ジグ(使う白金管外径+0.2 mmくらいの穴をあけた真鍮かステンレスのディスク)
-ニッパ(白金専用にして、白金以外には使わないようにする)
-プライヤー(小さいものが加工できる先端の細いもの)
-放電溶接機(自作も可能)
**手順(ピストンシリンダーとマルチアンビル用)
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Pt_welding1.png,right,30%)
 まずは白金管を必要な長さにカットします(試料高さ+溶接の糊代分x2+プラスアルファ)。普通ある程度まとめて作ってます。カットには片刃カミソリを使ってますが、変形を防ぐために白金管の中に内径よりもちょっと小さいドリルビットを入れておきます。そしてカミソリで抑えながら、白金管を回転してやるとカットできます。なるべく変形させないでおくと、後でまたカットする時に楽です。この時に生じた白金管の端から飛び出た部分は後で邪魔なので、ニッパでカットしておきます。なお、その時に出たクズや後の作業で生じた白金クズは全て白金スクラップ用のビンに保存しておきます。右側の写真はカット後の白金管と使ったドリルビット。
 買ったままの白金管の内部は綺麗でないし硬いので、まずはアセトンにつけて超音波洗浄をします。そして、電気炉で1300度以上で1時間程度加熱します。適当な電気炉がない場合や時間がない場合はガストーチで加熱することも行ってます。
 まずは白金管を必要な長さにカットします(試料高さ+溶接の糊代分x2+プラスアルファ)。普通ある程度まとめて作ってます。カットには片刃カミソリを使ってますが、変形を防ぐために白金管の中に内径よりもちょっと小さいドリルビットを入れておきます。そしてカミソリで抑えながら、白金管を回転してやるとカットできます。なるべく変形させないで作業しておくと、後で残りの白金管をカットする時に楽です。この時に生じた白金管の端から飛び出た部分は後で邪魔なので、ニッパでカットしておきます。なお、その時に出たクズや後の作業で生じた白金クズは全て白金スクラップ用のビンに保存しておきます。右側の写真はカット後の白金管と使ったドリルビット。
 買ったままの白金管の内部は綺麗でないし、引き抜き時に加工硬化しているので、まずはアセトンにつけて超音波洗浄をします。そして、電気炉で1300度以上で1時間程度加熱してアニールします。適当な電気炉がない場合や時間がない場合はガストーチで加熱することも行ってます。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Pt_welding2.png,right,20%)
 溶接用に白金管の先端部分をプライヤーでクランプします。ピストンシリンダーやマルチアンビル実験の場合はここを三つ折りにします(右の写真)。HIPや水熱合成の実験だと1つ折りでも問題ありませんが、後で整形したい場合は三つ折りが必須です(整形時により変形が少なくて済むので)。なお、クランプする時に余計な白金管の変形を防ぐために、ドリルビットを中に入れておき、ドリルビットの先端をクランプ部分からは少しずらせておきます。この位置をうまく調整しないとクランプした時にドリルビットの先端で白金が裂ける時があります。それを防ぐためにもドリルビットの先端は面取りしておきます。三つ折りなり1つ折りした時に両側の白金の高さが一致しない時は、ニッパでカットして揃えておくと溶接が楽です。どうしても中心部分が凹んでしまうので、カットする時に周辺部分を余分にカットして揃えると溶接がさらに楽。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Pt_welding3.png,right,20%)
 クランプした部分を溶接します。研究室では私の自作した溶接機を使ってます。溶接時には白金管をピンバイスでクランプしてますが、この時も変形を防ぐためにドリルビットを白金管の中に入れておきます。溶接機についてはこちら:https://mkanzaki.sakura.ne.jp/welder.htmlで紹介してます(かなり古い情報ですが)。左の写真は溶接後の写真で、この場合は3つ折りです。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Pt_welding4.png,right,20%)
 ピストンシリンダーやマルチアンビル高圧実験では高圧セル部分は空洞を残したくないので、こちらの研究室では白金管は整形しています。そのために上の写真に写っている真鍮のジグを使ってます(真鍮だと変形するのでステンレスで作った方がいいのですが)。これには白金管外径よりも+0.2 mmくらい大きな穴があけてあります。白金管をそこに丁寧に押し込みます。クランプした時に変形しているので、入りづらいですが、プライヤーで出っ張っているところを押さえながら、変形させながらやると入ります。この場合もドリルビットを中に入れておきます。それを金属板等の上に置いて、ドリルビットの先端をハンマーで叩いて、溶接した部分を整形します。右の写真は整形後の白金管の先端部分です。白金管をジグから取り出して、側面を実体顕微鏡で観察して、整形で穴などあいてないことを確認します。
 ピストンシリンダーやマルチアンビル高圧実験では高圧セル部分には空洞を残したくないので、研究室では白金管は整形しています。そのために上の写真に写っている真鍮のジグを使ってます(真鍮だと変形するのでステンレスで作った方がいいのですが)。これには白金管外径よりも+0.2 mmくらい大きな穴があけてあります。白金管をそこに丁寧に押し込みます。クランプした時に変形しているので、入りづらいですが、プライヤーで出っ張っているところを押さえながら、変形させながらやると入ります。この場合もドリルビットを中に入れておきます。それを金属板等の上に置いて、ドリルビットの先端をハンマーで叩いて、溶接した部分を整形します。右の写真は整形後の白金管の先端部分です。白金管をジグから取り出して、側面を実体顕微鏡で観察して、整形で穴などあいてないことを確認します。
 次に試料を白金管に詰めますが、この時にはさっき使ったジグを使うと白金管を立てておけるので便利です。溶接の糊代部分を残して試料詰めを終わります。糊代部分をどれだけ残すかは熟練度にもよりますので、最初は長めに残した方がいいと思います。きちんと詰めるためには試料の上からドリルビットで押して、さらにはハンマーで叩くとより多くの試料が入ります。ピンバイスがあれば、それを使って押してもいいと思います。試料容量の少ないマルチアンビル実験ではよく詰めることが重要です。最後は糊代部分の内側についた試料をキムワイプ等で拭いて綺麗にします。ここに粉末などが残っていると溶接がうまくいきません。そして前と同様に糊代部分を三つ折りでクランプしますが、今回は試料が入っているので慎重に行なって、中の粉末が糊代部分に上がってこないようにあまり下側までクランプしない方がいいでしょう。もし白金管が長すぎた場合は、クランプする部分を長くして、不要な部分をニッパでカットします。そして溶接を行います。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Pt_welding5.png,right,20%)
 最後の整形を行います。先と同様にジグに白金管を押し込みます。試料も入って膨らみ、さらに入れづらいですが、プライヤーで出っ張っているところを押さえながら、慎重にジグの穴に入れます。今回は先に使ったドリルビットではなく、ジグの穴にちょうど入るドリルビットを使います。それで白金管を整形します。ハンマーで今度は前よりも強く叩いて整形します。最後、白金管をジグから押し出すのにもハンマーが必要になります(そのためにジグの穴より大きな穴のあいた台か何かが必要)。右の写真は整形後の白金管を示してます。これは外径3.0 mm内径2.8の白金管を使ったものです。直径は3.2 mmくらいになってます。
 整形した白金管は実体顕微鏡で観察して、側面に亀裂などないことを確認します。また、直径と高さをノギスで測って、記録しておきます(必要なら重量も)。高さは他のパーツの長さ調整で必要になります。
**水を入れる場合(ガス圧装置や水熱合成の時)
 HIP(ガス圧装置)や水熱合成では水を入れる実験も多いのですが、この場合は少し手順が違います。また、各手順で重さを測定して記録しておくことが必要です。
 HIP(ガス圧装置)や水熱合成では溶接時は1つ折りでいいでしょう。それでもドリルビットを中に入れてクランプした方が変形が少なくなります。片側を溶接したら、まず重さを記録します。以後、白金管のハンドリングはピンセットで行います。
 水等液体を入れる場合は、シリンジを使って白金管の底に注入します。白金管を立てた方がいいので、白金管外径よりは大きな穴の空いた金属のジグを2つ作っておきます。1つは水や試料を入れる時に、もう1つはバランスの秤量皿の上に置いておくと立てたままで重さを測定できます(横にすると水が出てくる)。シリンジはハミルトン製がいいです。そして重さを記録して、必要分の水が入ったことを確認します。そして次に粉末試料を入れていきます。この場合は試料をドリルビットで押すわけにはいかないので、白金管の底をトントンと机の上で叩いて、なるべく粉末試料が沢山入るようにします。時々重さを測って、必要な量が入るまで続けます(または必要な量を予め取り分けておく)。手早くやれば、この過程での水の蒸発は無視できます。そのためにも水の入った白金管は直接手では触らないで、ピンセットでハンドリングする。
 溶接の糊代部分は上記の無水の場合よりはもっと長くとります。管の内側についた粉末はキムワイプなどで丁寧に取り除きます(その場合は再度重さを測る)。そして1つ折りでクランプします。溶接する時はできればこの1つ折りしている部分をピンバイスでクランプできるなら、そこの最下部でクランプします。糊代部分を長めにして、溶接を手早く行えば、白金管の下側の温度が上がることはありません。しかし溶接で試料部分の温度が上がることを防ぎたい場合は、白金管の下側に水を湿らせた綿やキムワイプで包みます。私は冷却用スプレーを溶接直前にスプレーすることも行ってます。ただ水の量がかなり多い場合は、スプレーした時に水が白金管から吹き出すことがありました(多分体積変化で)。溶接が終わったらまた重さを測ります。溶接前の重さと差がないことを確認します。溶接時に融けた白金が飛び散ることがあるので、わずかな減少が生じることはあります。
 きちんと封入されたかどうか確認するには、封入した白金管を100度ぐらいのオーブンに少し入れておいて重さの変化を調べることも普段行ってます。もしリークがあると重さが有意に減少します(最終的には水の重さ分だけ減少します)。
 問題なければ実験に使用します。実験後(回収後)も重さを測って記録します。場合によっては穴を開けて水だけ飛ばして、その後また重さを測ることもあります(含水量のチェックのため)。