分光器校正用ファイバー光源 の変更点


#author("2024-06-12T11:15:56+09:00;2024-03-09T18:41:20+09:00","default:masami","masami")
#author("2024-06-12T11:20:58+09:00;2024-03-09T18:41:20+09:00","default:masami","masami")
*分光器校正用のファイバー出力光源の自作 (2015/11/21作成)(2024/05/29更新)
 可視用分光器の入力部分(もともと両開きスリットがある)に、光ファイバー用のアダプタを作って取り付けた。そうなると校正用光源も光ファイバー出力のものがあると便利である。本当はOcean Opticsの水銀アルゴン校正用光源(HG-1)を持っているのだが、貸したきり戻ってこないので、手持ち部品で間に合わせの自作などを行った(今は戻ってきているので貸し出し可能ですが、ちょっと接触不良なのか点灯しない時があります)。
**光ファイバーの分光器への入力部分 [#o5c4d11e]
 Acton社のちょっと古いイメージング分光器(SP-300i)用で、光ファイバーからの光をf=50 mmアクロマートレンズでコリメートして、同じ焦点距離のレンズでスリットへ集光している。必要ならレンズ間にフィルターが入る。下の写真がアッセンブルしたもので、全てソーラボのパーツで作成した。左端には光ファイバーのSMAアダプターが付けてあり、SMA端の光ファイバーが取り付けでき、XY調整もできるようにしている。右端は分光器の入射スリット部分に自作アダプタにより、固定できるようになっている。これの組み立てではSM1用の外ネジbinding ringを2つ、内ネジ用を1つ使用している。また、フォーカス調整のために長さがadjustableなレンズ筒を2箇所で使っている。中央に短いレンズ筒を挟んであり、これはフィルターを取り付ける時のため。テストではソーラボの30 mmケージを使って組んでいたが、外光が分光器に入るので測定時に部屋を真っ暗にしないといけない。そこでレンズ筒で全て置き換えて外光が入らないようにして,部屋を真っ暗にしなくても測定できるようにした。フォーカスを合わせるのが不便だが。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/fiber-optics.png,center,80%)

**校正用ネオンランプ [#kf14ae6b]
 ネオン光源用のランプは、電気工作用の安い市販ネオンランプ部品を使い、ランプのカバー部分をカットして外し、ランプ部分むき出しにして使用している。電源は100 Vなので、スイッチ付き電線を半田付けして、熱収縮チューブを使ってよく絶縁する。ソーラボの短いレンズ筒の側面に穴をあけて、そこにこのランプをエポキシ接着剤で固定した。ほぼ同じものを顕微ラマン分光器用に作ってあり、測定系に組み込んである(普段はArレーザーのプラズマラインで校正するので出番はほとんどなかったが、Arレーザー引退したので活用している)。下の写真の上側右端で橙色に光っているのがそれ。写真では外してあるが、使用時には本体にねじ込む。他端に光ファイバーのSMAコネクターが取り付けてある。本体中央にf=30 mmレンズが1つあるだけ。ネオンランプは光源が広がっているので、このレンズでアバウトに集光して、ファイバー端面へネオンランプの光を入れている。これでも分光器の校正には十分以上の光量が得られた。下図の下側はこのネオンランプ光源を光ファイバー経由で分光器に入射して、測定したスペクトルを示している。ネオンランプピークの正確な波長については、濱口先生の「ラマン分光法」の付録に詳細なリストがある。示しているのは校正した後のスペクトル。圧力測定のためのルビー蛍光法利用時の校正にも使える。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Ne-Hg-lamp.png,center,80%)

Hgランプの加工後
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Hg-lamp.png,center,80%)

**校正用水銀ランプ [#g7fed3ad]
 ネオンランプのスペクトルを見ると、580 nm以上にはたくさんピークがあって有用であるが、短い波長側では強いピークがほとんどない。これでは困る場合もあるので、水銀ランプも合わせて使うことを考えた。Ocean Opticsの水銀アルゴン校正光源はまさにこのような目的のための光源であり、1つの光源で広い波長範囲をカバーしている。ここでは水銀ランプは別途用意する。数ワットの小型殺菌管を使う電池式ライトは数千円で手に入るが、これだと使う時に目の保護に気をつけないといけないし、光ファイバーに集光するにはデカすぎる。他の可能性を色々考えたが、最終的には歯ブラシ用殺菌ケースに目をつけた。これは歯ブラシをケースに入れて、フタを閉めると、小さい殺菌ランプが数分間点灯する代物である。数千円で手に入る(アマゾンで買った)。電源は乾電池である。上記写真下側の白いケースがこの目的に買った歯ブラシ用殺菌ケースである(加工前)。ケースを閉めた直後なので、殺菌ランプが点灯中であり、左上の青く発光しているところが水銀ランプである。ケースを少し加工して、光ファイバー用SMAアダプタを固定した(ランプが端にあるので、ケース内部で一度ミラーで反射させている)。レンズによる光ファイバーへの集光はしてない。加工後を上に示している。このランプのスペクトルを下図上側に示す。典型的な(低圧)水銀ランプのスペクトルである。これらのスペクトルはどちらも300 g/mmのグレーティングを使って測定した。スペクトルの横軸は水銀発光ピークの既知の波長(下を参照)を使って問題なく校正できた。ちなみに蛍光灯でも水銀ピークが2~3本は観察できるので、簡易的にはそれを使うことも可能である。

#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/lamp.png,center,80%)

-水銀の発光ピークの正確な波長が見つからなかったので、Payling and Karkins, "Optical emission lines of the elements", Wiley (2000)と上記スペクトルとを対応させて、ピーク波長を以下に書き出した(空気中の波長, nm)。
 404.656
 407.783 weak
 435.832
 491.606 weak
 546.073
 576.959
 578.966 weak 次のピークと重なる
 579.066 
 585.925 weak

#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Science-Surplus.png,center,80%)
**Science-Surplus ファイバー分光器の校正(2017/02/16追加) [#rb239587]
 [[Science-Surplus:http://www.science-surplus.com/]]の分光器(DIY Kit)を購入(上記の写真)。これはB&W TEKのOEM医療用製品(中古)から分光器部分を取り外して、新しいケースに入れて売っている会社で、調整はユーザーがやることでさらに安価(4万程度)で販売している(eBay)。また、分光器基板も入手可能である(Science-Surplusのソフトで動くが、最近Webページがなくなっている…)。その場合はspectrophtonという出品者から買う必要がある(これらはScience-Surplusの方が出しているようだ)。コンパクトで、入力はSMAの光ファイバー、シリアルインターフェースでPCと接続。電源はACアダプターを使う(付属)。SMA光ファイバーの短いのが1つ付属しているが、コア径は600 micron(太すぎると思うが)。購入したものは300~600 nmくらいの範囲で(ただ400 nm以下はほとんど測定できない)、1 nmの精度がある(多分もっとよさそう)。回折格子は1800 g/mmらしい。Win7で動く測定用プログラムも付いてくる(Win10でも動いた)。測定データはcsv形式でセーブできる。
#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/BandWTEK-inside.jpeg,right,60%)
 内部は写真で見るようにCross Czerny-Turner型の配置になっていた。普通のCzerny-Turnerの配置に比べてコンパクトになるので採用していると思う。グレーティングを交換して調整してみて分かったが、Cross Czerny-Turner型の配置の場合はグレーティングで回折された光の一部が直接CCDへ向かうためにそれをうまく避ける必要があり(この構造上遮蔽できない)、回折角度が自由に選べないようだ。
 最近(2024年5月)知ったのだが、この医療用製品とはラマン装置らしく、ちょっと怪しい感じの会社で医療関係の製品として売られていたものだった。なのでそこそこ安価で数も出ていて、中古に回ってきているようだ。その製品から取り出した他の473 nmレーザーや医療機器ほぼ本体もeBayで売っている。ただ、この分光器のCCDセンサーはラマンの測定にあまり向いている訳でもないので色々と疑問が残る…この中古を改造してラマン分光器として使おうとしているフォーラムなども存在するらしい。
 使っている検出器は、SonyのILX511で、2048 pixels, 14x200 micronの1次元CCDアレイ検出器。
 精密な調整は後でやるとして、まず水銀ランプを測定した。未調整でもスペクトルは結構きれい(長波長側のピークが少し非対称気味)。そこで横軸(波長)を水銀ランプで校正してみた。まずプログラムを使って上記の水銀ランプを光ファイバーでつないで、測定した。ピーク位置を7個拾って、Numbers(Appleの表計算ソフト)でプロットして、3次式にフィット。それの値をプログラムの校正に入力。それで再度水銀ランプを測定したのが下の図。感度も結構よい。508 nmのピークは水銀ランプにはないし、別の分光器では出てないので(上方の図と比較)、高次のピークらしい(高次ピークをカットするフィルターが入っていない)。範囲的には低波長側は330 nmまであるが、実際にはセンサーには380 nm以下の感度はないようだ。これを使って、チューナブル・バンドパスフィルターの校正をやり直した。そのうち、光源を買って、可視の透過スペクトル測定ができるようにしよう。
 調整にトライしたが、集光ミラーのあおり以外は微調整機構がないのとセンサーは高感度なので暗くしないといけないために結構難しい(黒い布を被せている)。安価な532 nmレーザーを光ファイバーで入射すると、光学素子のどこに光が当たっているかが分かるので、調整の目安になる。まずコリメーションミラーを回転させてレーザーが回折格子に当たるようにする。結像ミラーは回転・前後の荒い調整とミラー角度の微調整ができる。センサー中心付近に532 nmレーザーの1次回折光を当てるようにする。それだと400-650 nmくらいが範囲、左端側に当てると、500-750 nmくらいが測定できる。コリメーションミラーを前後させるとピーク半値幅が変わるので、前後に調整してピークの幅を最小にする。ピークの非対称性の調整は難しい。満足できるところまで行ってないが、ピークの非対称性もそれほど悪くない状態にはなった。
 調整にトライしたが、集光ミラーのあおり以外は微調整機構がないのとセンサーは高感度なので暗くしないといけないために結構難しい(黒い布を被せている)。安価な532 nmレーザーを光ファイバーで入射すると、光学素子のどこに光が当たっているかが分かるので、調整の目安になる。まずコリメーションミラーを回転させてレーザーが回折格子に当たるようにする。結像ミラーは回転・前後の荒い調整とミラー角度の微調整ができる。センサー中心付近に532 nmレーザーの1次回折光を当てるようにする。結像ミラーを微調整して、レーザーがCCD素子の上に当たるよいにする。それだと400-650 nmくらいが範囲、左端側に当てると、500-750 nmくらいが測定できる。それで一応スペクトルが取れるようになるはずである。ただピーク幅や非対称性があるのでさらに調整する。コリメーションミラーを前後させるとピーク半値幅が変わるので、前後に調整してピークの幅を最小にする。ピークの非対称性の調整は難しい。満足できるところまで行ってないが、ピークの非対称性もそれほど悪くない状態にはなった。

#image(https://mkanzaki.sakura.ne.jp/images/Hg_lamp.png,center,80%)