オートコリメーターの作成 の履歴(No.9)


オートコリメーターの作成(作成2024/06/27)(更新2024/07/05)

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完成したオートコリメーター(使用時の配置、左端のミラーは不要)

前書き

 オートコリメーターは光学系の調整に必須な道具なのですが、これまでは使わずに何とか調整してました。しかしないとやはり不便なことが多々あるので、今回やっと作成しました。作成にはThe PULSAR Engineeringを参考にしました。この方はOpenRamanのサイトもやられています。どちらも非常に有用なサイトです。

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オートコリメーターの概略図
 上の図にオートコリメーターの構造を示しています。レチクル(十字)から出た光がビームスプリッター(以下BS)に入って、2つのパスに分かれますが、1つのパスはBSで90度反射されて、50 mmのレンズを通って、カメラのCCD面で焦点を結びます。もう片方はBSで曲げられず真っ直ぐ進み200 mmのアクロマートレンズを通過して、(調整が済んでいると)コリメートされ、それがミラーで反射されて、再度レンズを通って集光するビームがBSを真っ直ぐ進んで、十字ターゲット上に像を作ります。この像は先の50 mmレンズ+カメラでも観察されるので、2つの十字がUSBカメラ上に映ることになります。明るい十字はBSで90度曲げられた方で、暗い十字はミラーで反射された方です。カメラ位置とレンズ位置を調整して両方がフォーカスしている状態にすることで、200 mmのレンズから出た光はコリメートされていることになります。オートコリメーターとして使う場合は、調整用に使った50 mmのレンズ等は外して、BSの逆側にカメラを移動します(赤の破線のパスで、一番上の写真は移動後の状態)。

光学系の作成

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 全てソーラボのパーツで、30 mmのケージを使って組みました。オートコリメーターは動態で保存しておく必要があるので、専用に部品を確保しておきます。まず調整のために光が透過するレチクル(十字)があると便利なので、型番R1DS3Nのnegative crossline test targetを使いました(右の写真)。これは十字の部分のみを光が通るようになってますので、非常に調整が楽になります。その後ろにLEDからの光を拡散させる板(DG10-1500)を置きます。これら2つをSM1のレンズ筒に組み込んで、SM1ネジのあるケージプレートに固定しました。
 その背後にLEDが来ます。LEDはいつもやっているように自作してもいいのですが、今回はソーラボのLEDモジュール(LEDMT1F)を使いました。これはLED素子自体をこれに差し込めるようになってます。なおモジュールは2種類あって、使う抵抗が少し違います。LEDMT1Fは61 ohmだったと思います。LED素子としては、赤LEDのLED630Eを使いました(5個セット)。LED素子のリードの足の長い方(プラス)は8 mm、短い方を6 mmに切っておきます(モジュールに差し込んだ時にちょうど収まるように)。電源はUSBケーブルから供給します。モジュール前方にSM05のオスネジが切ってあるので、SM05のメスネジを持つケージプレート(CP32/M)にねじ込んでケージ内に固定しました。
 ビームスプリッターは既に持っていたものを使っています(CM1-BS013)。レンズ2種(200 mmアクロマート, 50 mm)はレンズ筒に収めて、ケージプレートに固定します。50 mmレンズの前には可変絞りを置いています(なくても大丈夫かも)。50 mmの方はアクロマートでなくても両凸単レンズでOKです。なお、200 mmアクロマートレンズは平凸レンズだと思いますが、凸側をミラー側に配置します(平凸レンズには最適な向きがあります)。
 25 mmまたは1インチ直径のAl蒸着ミラーは今回はケージプレートに直接固定しました。場合によって2つの十字が重なることがあって、キネマティックマウントに載せて角度を調整したいところですが、大体は何とか対応できるのでそこまでする必要はありませんでした。USBカメラのための長さ調整が結構大変だったので、ケージロッドは長さが異なるものが色々とあった方が対応しやすくなります。カメラ自体がケージロッド内に収まるものだと都合がいいのですが、普通のカメラはそうではないので、ケージロッドがフォーカス調整時にカメラと干渉したりして長さを微妙に調整する必要があるのです。
 検出部は肉眼で覗くようにしてもいいのですが、レーザーを使った光学系の調整などでは危険なので、USBカメラで見ることにしています。手持ちの古いUSBカメラを使っています。このカメラを含めて多くはCかCSマウント(メスネジ)なので、CマウントのオスネジとSM1のオスネジが一体となったアダプタでケージプレートに固定しました。今回カメラの向きはどうでもいいので(十字が見えればいいので)、単純なアダプター(SM1A39)でいいと思います。それらをケージに組んでいきます。レンズ位置はノギスで大体合わせておきます。

装置の調整

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オートコリメーター調整時の配置
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 作成したものが上の写真です。これは調整時の配置になります。50 mmレンズ位置はレチクル(十字)から大体100 mmの位置に置いて、さらにそこから100 mmの位置にUSBカメラのCCD位置が来るように大体合わせます。これでまずカメラ位置を移動させて、明るい方の十字がはっきり見える位置を探します。そうしたらカメラ位置を固定します(実際にはケージプレートに固定されているので、プレート位置を動かして調整します。次に暗い方の十字がフォーカスするように200 mmレンズの位置を移動させます。2つの十字は明るさが違うので絞りや露光時間を変えて、はっきり見えるようにします。調整が終わったらレンズをしっかりと固定します(こっちもプレートを移動させて固定)。調整中のパソコン画面を右に示します。
 私の場合、上記のやり方で適当にやってみると、調整後に実際に使う配置にしたところカメラのフォーカスが合わせられない状況となりました。なので、そのような場合は先に実際に使う配置(一番上の写真)で200 mmレンズ位置の方を調整して、十字がカメラ上でフォーカスできるようにしておいて、200 mmレンズ位置を動かした分だけ十字位置も移動させて、それでもう1度調整から始めるとうまくいきました。またはカメラのバックフランジ距離や実際に使うパーツの長さなどを計測して、どちらにカメラつけてもフォーカスできるように最初から設計すればいいと思いました。
 オートコリメーターとして使う場合にはUSBカメラはビームスプリッターの反対側の位置にレンズなし(絞りも不要)で取り付けます(一番上の写真)。レンズが不要なのでカメラービームスプリッター間が短くなることに注意してください。そして十字がくっきり見えるようにUSBカメラ位置を調整します。これが終わるとミラーは不要なので取り外します(一番上の写真はまだミラーが付いている状態)。これでオートコリメーターを利用する準備ができました。

オートコリメーターを光学系の調整に使う

 主に2つの調整に使えます。無限遠調整とコリメート光を作る調整。

無限遠調整

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 CCD/CMOSカメラ+レンズ系で無限遠にフォーカスするように調整したいことがよくあります(これまでは窓の外の遠くの物体を使ってやってました)。オートコリメーターを使うともっと正確に調整ができます。この場合、オートコリメーター側のカメラは使いません。十字後ろのLED点灯が必要です。調整したい光学系を延長ケージロッドやプレートを使って、オートコリメーターの200 mmレンズの外側に組み入れます。そして調整したい光学系のカメラで観察しながら十字がちょうどフォーカスするように光学系のレンズ位置を調整します。これで無限遠に調整されることになります。上の写真はFLIRのCMOSカメラと50 mmレンズの系で無限遠に合わせているところ。50 mmレンズが入ったレンズ筒をねじ込んでいって、フォーカスが合ったところで固定します。右がFLIRのカメラで十字を観察しているところ(PC画面)。

コリメート光を作る

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 たとえば光ファイバー、ピンホールやスリットから入れた光をレンズでコリメートする場合に使えます(これまではレンズから出てきた光の大きさが距離を移動しても一定になるように調整してました)。この場合はLED点灯は不要で、オートコリメーター側のカメラでの観察が必要となります。調整したい光学系を延長ケージロッドやケージプレートを使って、オートコリメーターの200 mmレンズ外側に組み入れます。そしてカメラで見ながら、光ファイバー端、ピンホールまたはスリットがフォーカスするように光学系のレンズ位置を調整します。ピンホール、スリットの場合は背後に何か光源があった方がいいでしょう。ファイバーの時は光を他端から入れます。レーザーなどの強い光の場合はNDフィルターで光量を落とす必要があるかもしれませんが、その場合はフィルターはコリメートされている部分(200 mmレンズのすぐ外側)に入れないといけません。上の写真は光ファイバー+50 mmレンズの系でコリメートしているところ。右の写真はファイバー端(明るい円)がフォーカスするように調整しているところのUSBカメラのPC画像。
 どちらも調整したい光学系接続のために、ケージプレート2枚をレンズ筒とアダプタで連結したものを作って、両側のケージを接続している(ケージプレートでケージロッドを固定)。