SolExProメモ の履歴(No.41)


SolEx Proメモ(作成2024/11/07)(最終更新2024/12/25)

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(今日(2024/11/15)検索していたら Sunscan という新しい装置が別サイトで発表されていることに気づきました。こちらは望遠鏡に取り付ける装置ではなくて、D25 mmの対物レンズを含んだシステムで、それだけで太陽面の観察ができ、制御や太陽像の観察はwifiを使ってスマホやタブレットで出来ます。太陽面のスキャンは自転を利用しますので3~4分くらいかかります。観察ではRaspberry Pi 4Bとそれ用のHQカラーカメラユニット(Sony IMX477使用)を使っています。SolEx同様に光学パーツセットと本体3Dプリントパーツを購入することが可能です。下のSolExのパーツと同じメーカーで、既に販売してました。もちろん本体部分は3Dプリンタで自分で作ることも可能。そのサイトのFAQにはSunscanをSolExで使えるかとの質問に答えはNOとなっていたのですが、これは今試してます。最後の方をご覧ください。またSunscanメモのページも作りました。)


SolEx Pro(右の写真はAzur3dprintの3Dプリント済み部品)

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 最近の天文ガイド2024年11月号に太陽用分光器SolExの記事が掲載されていました(短期連載で12月、1月号にも載ってました)。SolExはフランスのChristian Builさんが開発された太陽用の分光器で、それを超狭帯域フィルターとして使って、さらに太陽面をスキャンすることで特定波長での太陽面画像を再構成することができます。特徴としては3Dプリンターで本体を作成できるようにしていることで、比較的安価に製作できることです。また星用のStarExもあります。さらにウェブで詳しく調べてみると汎用の分光装置としても使えそうな感じがあったので購入してみました。なのでこのページは太陽面観察自体というよりはSolExを実験室の分光器として使うことも目的としてます。太陽も観察しますが。
 なお正確にはSolとExの間にアポストロフィが入るのですが、このwikiではアポストロフィがあるとエラーになるのでSolExと記載しています。私が購入したのはSolEx Proの方です。私も3Dプリンターを持っているのでSolExのオリジナルバージョンを印刷することは多分可能なのですが、色々と難しいことがあるようなので完成品をAzur3dprintから購入しました。230ユーロだったと思います。なお、初回購入は割引があり、またDarkSkyGeekのStarEx Proのyoutube動画の最後に割引のお知らせがあって、そちらも合わせて利用可能だそうです。ただこれはStarEx ProだけなのかSolEx Proにも適用可能なのかちょっと分かりませんでした。私は注文後にその動画を見たのでこの割引は試していません。
 SolEx ProはProでないものに比べてネジ部分にアルミ製パーツを使うことで丈夫になっていて、スリット側のフォーカス調整機構が付き、材質もPETGよりも熱に強いフィラメントを使っているなどの各種改良がなされています。この辺りが自作することを躊躇する理由です。また、内側で使っているネジが黒い艶消しになってました(DarkSkyGeekの動画では黒くなってないので、これはごく最近の改良のようです)。到着時に関税5200円取られました(これにはSolEx Pro以外のものも含まれています)。届いたパーツを右側に示してます。紙の組み立て説明書は付属してませんでしたが、Azur3dprintのSolEx Proのページから組み立てと調整のpdfがダウンロードできます。Pro用ではないのですが、特に問題はありません。なお自作する場合、PLAフィラメントは赤外光を透過するため使わない方がいいそうです。PETGの使用が推奨されています。

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 光学パーツについてはShelyak InstrumentsでSolExに必要な光学パーツセットを販売してます(405ユーロ)。こちらも購入しました。関税は8000円でした。スリット以外はエドモンド、ソーラボなどでも入手可能ですが、ShelyakのレンズはSolExに最適化されているようです。右に届いたパーツの写真を示してます。アクロマートレンズ2種、10ミクロンスリットと2400 g/mmの回折格子。
 スリットは蒸着されていて、斜めに取り付けるようになってます。これは多分太陽光をそのまま対物レンズ側に返さないためと、StarExではオフアキシスのミラーをもう一個取り付けて画像を見るためだと思われます。
 SolExを完成させるためには以上以外にCMOSカメラ、ZWOのヘリコイド、減光フィルター(望遠鏡に取り付ける)が必要です。カメラによってはさらにヘリコイドとカメラを接続するアダプタが必要になります。
 使うCMOSカメラとしてはSonyのIMX178センサーを使ったものが推奨されています。AWOのASI178MMやPlayer OneのSedna-MやNeptune-Mが相当します。私はどれも持ってないので、とりあえず持っているPlayer OneのCeres-MかNeptune-CIIを使ってます。Sedna-MとCeres-Mはガイドスコープ用で、先端が1.25インチ径のスリーブ状になってます。これらはZWOのヘリコイドだけでは焦点が合わないので、右の写真のように手元にあったNorthern Cross社のM42/31.7 mmの変換アダプタを追加して接続しています(これはシュミットで購入)。なるべくカメラ先端を奥で保持するためにヘリコイドの目盛5程度にしておきます。

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 また右の写真には取り付けてないのですが、上の届いたパーツの写真の右下にある赤いリングをCeres-Mに取り付けています。これを使うと焦点は変えずにカメラを回転させることができるので調整に便利です(説明がないのでこのパーツの本来の目的はよく分からないのですが)。Player OneのNeptune-M等の六角形カメラの場合はノーズピースが付属しているので、それを使えばZWOのヘリコイドに固定して焦点も合わせられます。太陽観察目的だとグローバルシャッターの機種が今後使われるようになると思われますが、Player OneだとXena-MがグローバルシャッターのCMOSを採用しています。なお私はTeledyneのBlackflyカメラ(BFLY-U3-23S6M-C)を持っているのですが、それはXena-Mと同じCMOSセンサーを使っているので、時間があればそれでも撮影してみます。
 光学パーツの本体への組み込みと調整はそれほど難しくはなく、説明書や youtube動画 通りにやれば問題ありません。動画はProではないのですが、大きな違いはないと思います。Builさんの動画では回折格子の側面を手で触れてますが、側面であっても手で触れない方がいいと思います(側面についた手の油脂が拡がっていくため)。手袋して扱った方がいいでしょう。SolEx ProをMILTOL望遠鏡(f =200)に取り付けた状態を一番上の写真に示しています。

テスト

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 入手してから曇り続きで太陽の観測はできてませんが、曇り空でもスリット側を空に向けるとフラウンホーファー線がちゃんと見えました。この写真をよく見ると埃がいくつも見えるので原因を調べたらCMOSセンサーについてました。掃除したので今はなくなってます。曇り空でもスリット部のフォーカス調整などには十分です。蛍光灯に向けると水銀のスペクトルが、ネオンランプをスリット前におくとネオンランプのスペクトルが得られました。
 SolExの本来の利用はモーター駆動の赤道儀架台に載せて太陽を自動追尾させておいて、スキャンする時は8,16倍速くらいで太陽をスキャンするので10秒程度で測定は終わります。私はモーター駆動の赤道儀は持ってないのでこの方法は使えません。地球の自転を使ったスキャンする方法(Sun scan)があるので、そちらで観察することを考えていました。ただこの方法を説明したyoutubeビデオはどちらもフランス語しかないので、あまりよく分かりません。そうしている間にSun scan専用の装置、Sunscanが出てきたので、今はSunscanのアプリを使って太陽を観察しています。

新しいスリットについて

 元々10ミクロン単独のスリットがSolExに使われていたのですが(私が買った時のもこれ)、最近6と10ミクロンが1枚に付いたスリットに変更されています。また新しいSunscanでもこの新しいスリットが使われています。ただ1枚に2つスリットがあるために少しずらせて設置する必要があるので、この新しいスリットを使う場合はそれに対応したスリットの保持パーツが必要です。stlファイルも提供されているので自作も可能です。PETGかそれより高温で持つフィラメントで印刷する必要があります。

汎用分光器として使ってみる

 分光器としては入射側コリメートレンズf=80 mm、2400 g/mmの回折格子、検出側レンズf=125 mmの仕様になりますが、回折格子やレンズ等は交換可能です。ただレンズの焦点距離を変えるためには保持リングを3Dプリンタで作り直す必要がありそうです。

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 スリット部の端(四角い部分)はM42メスネジとなっているので、ソーラボのM42オスネジ–SM1メスネジのアダプタ(SM1A49)を使うと、ソーラボ標準のSM1使用の光学系に組み込むことができます。光ファイバーのコネクタをSM1のパーツを使って接続すれば光ファイバー入力の分光器としてすぐ使えます(スリットは外しておく)。右の写真はそうやって光ファイバーを接続した状態です。これで光ファイバーから導入した光を分光して画像として測定できるようになりました。
 ただよくあるNA0.22の光ファイバーを使うとして、コリメートレンズ80 mm焦点距離だとファイバーからの光はレンズ位置で35.2 mmまで広がるので、半分くらいの光しかレンズを通らないことになります。50 mmくらいの焦点距離レンズを使えばいいのですが、そうすると拡大倍率が2.5倍になるので、それもちょっと困る気がします。まあそちら側のレンズの焦点距離も変えればいいのですが。太陽用には分散方向を縦(CMOSセンサーの短い方向)にしますが、分光器目的では分散方向は横にして横長なセンサーを有効利用した方がいいでしょう。

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 SolEx Proは望遠鏡に取り付けて使うことを想定しているため、平らな机の上では安定しません。固定ネジ(赤いやつ)が突き出ていたり、取り付けるカメラが大きいと机に当たって邪魔なためです。私はAzur3dprintでKodak Turntableも購入しました。これはSolEx Proの下部に取り付けて、雲台に載せるためのアダプタです(これだけなら3Dプリンターで自分で作れそうですが)。その下にさらに自作プレート1枚を置いて雲台用ネジを使って固定しました。これで机の上でも安定するようになりました。Kodak Turntableを付けて、スリット前にD25 mm対物レンズf = 200 mmを置くと光学的にはSunscanとほぼ同じです。

neon-2Dimage-fits.png

 右の図は光ファイバー(50ミクロン径)で取り込んだネオンランプのイメージです。これはPlayer OneのNeptune-CIIで撮ってます。SharpCapという天体撮影用のプログラムを使って撮影しました。範囲的には590 nm付近です。保存ファイル形式は天文分野でよく使うfitsを使いました。この画像を1次元スペクトルに変換するためにpythonでちょっとコードを作りました。fitsファイルを処理する場合にはastropyライブラリーがよく使われるので、astropyを使ってfitsファイルを読み込んで、縦方向にスポットがある辺りを縦に積算して1次元スペクトルに変換してみました。積算にはNumpyを使ってます。1行で(範囲を指定した)積算が処理できるので便利です。得られたスペクトルを下に示してます。左側が長波長側になります。そのままだとギザギザするので少し平滑化してます。これもNumpyの関数を使ってます。そのまま積算しているのでバックグラウンドが非常に大きな値になってます。

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 532 nmレーザーをルビーに照射して生じた蛍光を見てみました。ルビー蛍光の2つのピークが690 nm付近に出ます。100ミクロン径光ファイバーを使ってます。ルビー蛍光法による圧力測定用途にも十分使えそうです。別ページで自作のLittrow型分光器について書いてますが、分解能はそれと同じかもっといいかもしれません。焦点距離が短い割に分解能がよくなっている理由は検出器のピクセルの大きさがSolExの方がかなり小さいからです(約1/5)。もちろんファイバー径がそれよりは遥かに大きいので、十分分解能を生かしている訳ではありませんが、ルビー蛍光自体の線幅自体が広いのでファイバー径を小さくしても線幅はほぼ変わりません。

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 比較的安く分光器を入手する方法の1つとしてSolExはいいかもしれせん。もう少しきちんとしたものが欲しい場合は、 OpenRaman や同じ人が作っている 分光器 がいいかもしれません。これらはソーラボのパーツを主に使ってます。

ラマンスペクトルを撮ってみる

 ここまで来ると私的にはSolEx Proでラマンスペクトルが測定できるのかどうかが気になります。簡単な顕微測定光学系を組んでみました(上のルビー蛍光もこれで測定)。

SunScan風に使ってみる(2024/11/20)

(Sun scanはSolExでも地球の自転を利用して太陽面をスキャンする方法として取り上げられていますが、ここのSunScanは新しい装置の方です)
 本来の太陽観察に戻ります。SolEx Proを購入して1ヶ月もしないうちに Sunscan が出たことを知って、最初微妙な気分になりましたが、SolExでもカメラ部分をSunscanのものに変えればSunscan的に使えるかなと考えました。光学系にちょっと違いはあるのですが(コリメートレンズの焦点距離が80から75 mmへ、結像レンズの焦点距離が120から100 mmへ変更、対物レンズからの光をミラーで反射させている、対物レンズはD25, f=200で固定)、マニュアル等を読む限りSolExでも利用できない理由はなさそうです。(その後調べたらFAQに「SolExでSunscanは再利用できますか?」というのが載っていて、光学系はSunscan専用に設計しているとの理由で答えはNoになってました…)
 そう言われても試すのは自由なので試してみました。私の場合、MILTOL200望遠鏡を使うので、対物レンズの焦点距離的にはSunscanと同じで、太陽像はスリットの長手方向内に十分収まります。Sunscanではカメラ制御等にRaspberry Pi4Bを使うのですが、Pi4B (4 GB)は既に持っているので、HQカメラ、128 GBマイクロSDメモリ、Pi4Bのクーラーくらいを買い足せば何とかなりそうなので、早速購入しました。SunscanではバッテリーでPi 4Bを駆動するのですが、私は取り敢えずACアダプタで済ませてます。Sunscanはケーブルが外に全く出てないし操作もスマホからなので、特に屋外で便利そうです。実際にはSunscan以外にさらに経緯台が必要です(Sunscanには下部にドブティルが取り付けられています)。
 まずは マニュアル 通りにRaspberry Pi ImagerとSunScan OSをダウンロードして、ImagerをPCで動かして、SunScan OSをマイクロSDメモリに書き込みます。そのマイクロSDメモリをPi4Bに挿入して、カメラを接続して、Pi4Bに電源を繋いで起動します(起動スイッチはありません)。下の写真はPi4Bにカメラをつないだところ。テストのためにCマウントレンズを取り付けてます。

raspberry-pi-4B-HQ-camera.png

 iPhoneにSunosアプリをApp Storeからダウンロードします(Android版もあるようです)。wifiでSunscanに繋いで、iPhoneのSunScanアプリを起動すると、firmwareのupdateをするように言われるので、一度wifiをインターネットに繋ぎ直してfirmwareをダウンロードします(自動)。1.7から1.9へアップデートされました。再度wifiでSunscanに繋いで、iPhoneのアプリを起動して、Connect Cameraをタップします。左端の上から2つ目のアイコンをタップするとカメラ画像が見られます。ただしアプリの使い方についてはあまり説明がありません(調節のマニュアルで調節のための説明がありますが)。最初カメラ画像が途中で切れたりしたのですが、iPhoneを再起動したりしてたら(iOSアップデートもあったし)、安定的に画像が映るようになりました。下がSunscanの画面コピーです。これは天井が写ってます。実際には私のiPhoneでは左側のアイコンが半分隠れてます…
 時々Sunscanアプリが正常に動いてない時がありますが、その場合はiPhoneを再起動するのも1つですが、ホーム画面で下からスワイプして、中央部分で止めると現在動いているアプリが出てきます。それのSunscanのところで上にスワイプするとアプリが停止させることができるようです。

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 SunScan OSとSunScanアプリはちゃんと動くことが分かったので、HQカメラをSolEx Proに接続します。HQカメラはCマウントです。これは実はちょっと厄介でM42ネジからCマウントネジへ接続するアダプタがあればいいのですが、適当なものがありません。私の手持ちのパーツの中ではM42ネジからソーラボのSM1ネジへのアダプタとSM1からCマウントへの変換アダプタはあるので、それにSM1対応のレンズ筒を使って何とかフォーカスが合わせられました。付属のM42延長筒(30 mm)は取り外しますが、ZWOのヘリコイドは使います。下の写真はカメラ側の焦点合わせにその部分を取り出して三脚に載せた状態。

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 HQカメラとPi 4Bはリボンケーブルで繋がっているため取扱に注意が必要です。カメラの近くにPi 4Bを固定しておく必要があります。実際に太陽を見るためには雲台にSolEx Proの下に板を取り付けて、それにPi 4Bをとりあえず固定するようにしました。Sunscanではそういう問題はなくて、Pi 4Bのハウジングがちゃんと用意されてます。
 Sunscanのマニュアルによると回折格子の保持パーツの底に改良がなされていて、傾きが固定ネジの締め加減で調整できるようになってました。SolExにはそういう機構はありません。そこで薄い蒲鉾状の棒を3Dプリンタで作って、回折格子の保持パーツ下に入れてみました。一応固定ネジの締め加減で回折格子傾き角度が調整できるようになりました。なのでネジは軽く締めておきます。もっとも回折格子の回転を固定するネジを締めても傾きが変わるのですが…またスリットの両端は画面上では同時に見えないので、中心に合わせるのは結構大変そうです。下の図は回折格子を0次反射の位置にして、スリットのフォーカスを合わせているところのiPhoneのスクリーンショットです。横の白いスジがスリットの画像です。スリットが水平になる様にカメラの傾きを調整する時は下側のグリッドをタップすると十字線が出て合わせ易くなります。カメラの回転はHQカメラ自体が回転できるようになっているので、それを利用してます(マイナスネジで固定する)。この画面で上のアイコンで露光時間やゲインを変えることができます。

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 またこの画面では横にビニングすることができて、スペクトル的に示すので、スリットによるピークの線幅を見ながらスリットのフォーカスを調整することが可能です(下のスクリーンショット)。必要なら縦方向にビニングもできます。

SolExPro-Sunscan-slit-binning.png

 Raspberry Pi 4Bの4 GBの使用を前提としてますが、最新のRaspberry Pi 5で動くのかどうか気になりました。FAQのところにこの点についての記述がありましたが、開発者らはまだ試してないそうです。私はPi5も持っているので早速試してみました。なおPi5用カメラのリボンケーブルとPi4のものは互換ではありません。なのでPi5用のケーブルがまず必要です。それで4Bに入っているマイクロSDを取り出して、Pi5に入れて起動したところ、問題なく起動して、iPhoneのSunscanアプリから接続して、カメラ画像を得ることができました。Pi5の処理速度は2倍ほど速くなっているようなので、処理などの時間が短縮されることが期待できそうです。実際画像の後処理時間を2つでラフに比べたところ、2.5倍くらい速くなってました。現在Pi5に正式に対応しているバッテリはないようです。Suscanで使われているバッテリはPi5には電流が足りなさそうです。現状バッテリ駆動にするなら4Bにするしかなさそう。ただ実際に太陽像を撮ろうとすると1つ問題がありました。4Bでは強度が12 bitで4096までの表示で、これを超えないように調整するのですが、Pi5にするとどうもここが12 bitでなくなってもっと大きな数字がでてきます。適当なところで測定しても画像が処理されないことが多々ありました。多分強度が想定外の値になって処理がうまくいってない感じがあります。なのでまたPi 4Bに戻しました。


 今日(2024/11/25)は午後晴れたので、SolEx Pro + MILTOL200望遠鏡でSunscanでちょっと撮ってみました。iPhoneでSunscanアプリを使って撮影します。一応太陽面画像(Halpha)を得ることができました!しかしスキャンの跡がよく分かるジャギーな感じになってしまいました(下の画像)。何度か撮影したのですが、あまり改善されません。今日はシーイングが悪いのかもしれませんが、それ以上に色々と調整がまだ十分できてないのかもしれません。しかし悪いなりに 宇宙天気予報 のページの現在の太陽プロミネンス動画と比べてちゃんと対応していることを確認しました。
 撮影は、まずスリットに太陽像を導入して、Halpha線をカメラ側のヘリコイドでハッキリするように合わせます。実はスリットに太陽が来てなくてもフラウンホーファー線は見えるのですが、太陽像がスリットに来ると強度が圧倒的に違うので分かります。Halpha線が水平になるようにカメラを回転します(この時、グリッドをタップして十字を出しておきます)。Halpha線はドップラー効果のために場所によって上下に少しずれていて、このウネウネがよく見えるのがベストなフォーカス位置となります。そして左右の太陽の縁がはっきりするように望遠鏡側のフォーカスを合わせて、Halpha線の場合は赤のチャンネルにして、強度が飽和しない程度にゲインと露光時間を調整します(スマイルマークになればOK)。露光時間の範囲はアイコンを長めにタップすると変わります。そして右側にあるクロップアイコンをタップ。上下矢印アイコンをタップして、Halpha線がクロップした領域の中央に来る様にします。そして三脚(または経緯台など)の微動を使って太陽の進行方向の少し前に持っていきます。そして録画ボタンをタップします。縁のプロミネンスなどが見えるので、太陽の端よりはもっと前からスキャンを初めて、太陽の端が通り過ぎてもしばらく待つ必要があるそうです(なので実際は約4分スキャンする)。この辺りの操作方法は こちらのページ からリンクしているyoutube動画を見るといいです。
 スキャンを終えるには録画ボタンを再度タップします。次に左側のサムネールのアイコンをタップして、そこで撮った画像(画像自体はまだ出てませんが)の矢印をタップしてしばらく待つと画像処理された画像が3つ表示されます。これらはiPhoneにダウンロードもできます。さらに画像処理を後でカスタマイズすることもできます(そちらの方が処理画像の種類がもっと多くて黒点の画像などが追加されますが、処理には数分かかります)。結構難しいのはスキャンの最初と最後でCMOS画面上からはみ出さないようにすることで、これには望遠鏡を適切に回転させておく必要があります。またスキャンの最初は太陽面の進行方向の少し前に持っていく必要がありますが、これも微動付き三脚ではちょっとやりづらいです(マンフロットの三脚を使いました)。できれば経緯台を使った方がいいでしょう。SunScanのyoutubeビデオではSky WatcherのAZ-Pronto経緯台が使われていました(三脚部分は別メーカーの小型のものを使っている)。

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 下の写真は今日使ったMILTOL200望遠鏡 + SolEx Pro + SunScanのRaspberry Pi 4BとHQカメラ、マンフロット微動三脚の組み合わせ。Miltolの先端についているのは減光フィルター。ただ適当なものがなかったので、偏光式の濃度可変フィルターを使ってます。

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 SunScanはハード・ソフト両方ともSolExより使いやすいと思いますが、使うカメラと対物レンズが限定されるため色々試したいユーザーには向かないかもしれません。星の分光にも向いてません。SunScanのハードを汎用分光器として使うなら、対物レンズを無限光学系顕微鏡の集光レンズとして使って、顕微分光用途で使えそうです。カメラはもっと感度のいいものに変えますが。ソフトの方はそのままは使えません。また3Dプリンター用STLファイルも公開されているので、光学装置を作るための参考になると思います。
 現在カメラカバーがなくて基板剥き出しだとバックグラウンドが高くなる感じがあるのでとりあえずは黒布で覆ってましたが、Sunscanのサイトにあるカメラカバーのstlファイルを使って、3Dプリンター(AnkerMake M5C)で印刷してみました。M2用の埋め込みネジをハンダごてを使って挿入して、そのネジを使ってカメラケースを組み立てられました。回転固定ネジにアクセスが難しくなりますが、ぎりぎり回せないことはない感じです。
 その後、結局Sunscan本体部を作ってしまいましたが、そちらについてはSunscanメモに書いてます。