SolExProメモ の履歴(No.4)


SolEx Proメモ(作成2024/11/07)(改訂2024/11/09)

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SolEx Pro(右の写真はAzur3dprintの3Dプリント済み部品)

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 最近の天文ガイドに太陽用分光器SolExの記事が掲載されていました。SolExはフランスのChristian Builさんが開発された太陽用の分光器で、それを超狭帯域フィルターとして使って、さらに太陽面をスキャンすることで特定波長での太陽面画像を得ることができます。特徴としては3Dプリンターで本体を作成できるようにしいることで、比較的安価に製作できることです。また星用のStarExもあります。さらにウェブで詳しく調べてみると汎用の分光装置としても使えそうな感じがあったので購入してみました。
 なお正確にはSolとExの間にアポストロフィが入るのですが、このwikiではアポストロフィがあるとエラーになるのでSolExと記載しています。私が購入したのはSolEx Proの方です。私も3Dプリンターを持っているのでSolExのオリジナルバージョンを印刷することは可能なのですが、色々と難しいことがあるようなので完成品をAzur3dprintから購入しました。230ユーロだったと思います。なお、初回購入は割引があり、またDarkSkyGeekのStarEx Proのyoutube動画の最後に割引のお知らせがあって、そちらも合わせて利用可能だそうです。ただこれはStarEx ProだけなのかSolEx Proにも適用可能なのかちょっと分かりませんでした。私は注文後にその動画を見たのでこの割引は試していません。
 SolEx ProはProでないものに比べてネジ部分がアルミ製パーツと丈夫になっていて、スリット側のフォーカス調整機構が付き、材質もPETGよりも熱に強いフィラメントを使っているなどの各種改良がなされています。この辺りが自作することを躊躇する理由です。また、内側のネジが黒い艶消しになってました(DarkSkyGeekの動画では黒くなってないので、これはごく最近の改良のようです)。到着時に関税5200円取られました。届いたパーツを右側に示してます。紙の組み立て説明書は付属してませんでしたが、Azur3dprintのSolEx Proのページから組み立てと調整のpdfがダウンロードできます。Pro用ではないのですが、特に問題ありません。なお自作する場合、PLAフィラメントは赤外光を透過するため使わない方がいいそうです。PETGの使用が推奨されています。

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 光学パーツについてはShelyak InstrumentsでSolExに必要な光学パーツセットを販売してます(405ユーロ)。こちらも購入しました。スリット以外はエドモンド、ソーラボなどでも入手可能ですが、ShelyakのレンズはSolExに最適化されているようです。右に届いたパーツの写真を示してます。アクロマートレンズ2種、10ミクロンスリットと2400 g/mmの回折格子。
 SolExを完成させるためには以上以外にCMOSカメラ、ZWOのヘリコイド、減光フィルター(望遠鏡に取り付ける)が必要です。カメラによってはさらにヘリコイドとカメラを接続するアダプタが必要になります。
 使うCMOSカメラとしてはSonyのIMX178センサーを使ったものが推奨されています。AWOのASI178MMやPlayer OneのSedna-MやNeptune-Mが相当します。私はどれも持ってないので、とりあえず持っているPlayer OneのCeres-Mを使ってます。Sedna-MとCeres-Mはガイドスコープ用で、先端が1.25インチ径のスリーブ状になってます。これらはZWOのヘリコイドだけでは焦点が合わないので、右の写真のようにNorthern CrossのM42/31.7 mmの変換アダプタを追加して接続しています(これはシュミットで購入)。なるべくカメラ先端を奥で保持するためにヘリコイドを目盛5程度にしておきます。

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 また右の写真には取り付けてないのですが、上の届いたパーツの写真の右下にある赤いリングをCeres-Mに取り付けています。これを使うと焦点は変えずにカメラを回転させることができるので調整に便利です(説明がないのでこのパーツの本来の目的はよく分からないのですが)。Player OneのNeptune-M等の六角形カメラの場合はM42メスネジが先端にあるので、M42の短めの延長チューブがあれば接続できるはずです。太陽観察目的だとグローバルシャッターの機種が今後使われるようになると思われますが、Player OneだとXena-MがグローバルシャッターのCMOSを採用しています。なお私はTeledyneのBlackflyカメラ(BFLY-U3-23S6M-C)を持っているのですが、それはXena-Mと同じCMOSセンサーを使っているので、時間があればそれでも撮影してみます。
 光学パーツの本体への組み込みと調整はそれほど難しくはなく、説明書やyoutube動画通りにやれば問題ありません。動画はProではないのですが、大きな違いはないと思います。Builさんの動画では回折格子の側面を手で触れてますが、側面であっても手で触れない方がいいと思います(側面についた手の油脂が拡がっていくため)。手袋して扱った方がいいでしょう。SolEx ProをMILTOL望遠鏡(f =200)に取り付けた状態を一番上の写真に示しています。

テスト

SolExPro-test-sky-spectrum.png

 入手してから曇り続きで太陽の観測はできてませんが、曇り空でも空に向けるとフラウンホーファー線がちゃんと見えました。よく見ると埃がいくつも見えるので原因を調べたらCMOSについてました。掃除したので今はなくなってます。曇り空でもスリット部のフォーカス調整などには十分です。蛍光灯に向けると水銀のスペクトルが、ネオンランプをスリット前におくとネオンランプのスペクトルが得られました。

汎用分光器としての使用

 分光器としては入射側レンズf=80 mm、2400 g/mmの回折格子、検出側レンズf=125 mmの仕様になりますが、回折格子やレンズ等は交換可能です。ただレンズの焦点距離を変えるためには保持リングを3Dプリンタで作り直す必要がありそうです。

SolExPro-optical-fiber-input.png

 スリット部の端(四角い部分)はM42メスネジとなっているので、ソーラボのM42オスネジ–SM1メスネジのアダプタ(SM1A49)を使うとSM1の光学系に組み込むことができます。光ファイバーのコネクタをSM1のパーツを使って接続すれば光ファイバー入力の分光器としても使えます(スリットは外しておく)。右の写真はそうやって光ファイバーを接続した状態です。それでネオンランプのスペクトルが画像としては測定できるようになりました。
 ただよくあるNA0.22のファイバーを使うとして、コリメートレンズ80 mm焦点距離だとファイバーからの光はレンズ位置で35.2 mmまで広がるので、半分くらいの光しかレンズを通らないことになります。50 mmくらいの焦点距離レンズを使えばいいのですが、そうすると拡大倍率が2.5倍になるので、それもちょっと困る気がします。まあそちら側のレンズの焦点距離も変えればいいのですが。
 太陽用には分散方向を縦(ピクセルが少ない方向)にしますが、分光器目的では分散方向は横にした方がいいでしょう。下の図は光ファイバー(50ミクロン)で取り込んだネオンランプのイメージ。横方向に分散させてます。

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