Sunscanメモ の履歴(No.3)


SunScanメモ(作成2024/12/05)(最終更新2024/12/05)

Sunscan-case-3dprint.png

Sunscanについて(上の写真は3DプリントしたSunscanケース)

 SUNSCAN は比較的簡単に太陽を観察できる望遠鏡+分光器ハードとその観察をサポートするソフトを合わせたシステムのことです。普通の望遠鏡とは異なり、太陽面の一部をスリットで切り取り、それの分光を行ない、地球の自転を利用して太陽面をスキャンすることで、特定波長(水素アルファ線など)で見た太陽面画像を得ることができる装置です。STAROSというフランスのチームにより作られました。STAROSのメンバーには別のページで書いているSolExの開発者Christian Builさんがいて、SolExを一般向けにより扱いやすくしたのがSUNSCANと言えます。ハード部分は完成品ではなくて、自分でパーツを集めて組み立てる必要がありますが、既に印刷された本体パーツ、必要な光学パーツをまとめたセットを購入することができます。対物レンズも込みなので、SolExのように望遠鏡を別途用意する必要はありません。バッテリ駆動で、操作はスマートフォンからwifiを使ってできるため、Sunscanを何かに繋ぐ必要がありません(つまりケーブルが出てない)。ただ太陽導入のために経緯台か微動付きの三脚が別途必要です。
 望遠鏡部分は直径25 mm焦点距離200 mmの対物レンズを使ってますので、かなりコンパクトです。分光器部分はコリメーターレンズがf=75 mmで、集光レンズがf=100 mmで、回折格子は2400 g/mmのものを使ってます。検出器部分はRaspberry Pi 4B 4GBとそれ用のHQカメラ(Sony IMX477使用)を使います。制御のためにRaspberry Pi用のOSが提供されています。また、Raspberry Piとはwifiを使って、スマートフォン、タブレットから接続して、アプリから簡単に観察やデータ処理ができるようになってます。装置としての完成度は高いです。
 作成するために必要な予算は大体20万くらいでしょうか(Sky Watcherの経緯台+三脚込み)。自分でパーツ印刷すると数万円浮きます(3Dプリンターを持っているとして)。経緯台など既に持っているともっと下がります。

Sunscan-3D-printed-parts.png

Sunscanの作製(まだ途中です)

SunScan-case-bottom-printing.png

Sunscanの3Dプリントパーツの作成

 3Dプリントパーツは Azur3dprint から購入することもできますが(SolEx Proの場合はここで購入しました)、今回は自分で印刷しました。全パーツのSTLファイルは先のSunscanのサイトにあります。また組み立て方法と調整については同じサイトからpdfがダウンロードできます。一番大きなケース部分でも20 cm以下なので普通の3Dプリンターで印刷できます。私が使ったプリンターはAnkerMakeのM5Cです。フィラメントにはPETG黒を使いました(PLAは赤外線を透過するのでよくないそうです)。右の写真はケース下部の印刷中。AnkerMake Studioのデフォルトだとフィラメントの温度が230度なのですが、私の場合はフィラメントが一部固まりになったりしてうまく印刷できず、242度に上げて印刷するとほぼ問題なく印刷できました。なお印刷する時に方向があって、どの面を底にするかはSunscanのサイトに示されています。M5Cの場合はSTLを読み込んだ後で、上側にあるAuto Bedアイコンをクリックすると大体正しい方向に直してくれますが、正しくない場合は回転アイコンをクリックして正しい方向に向けます。サポートは1つのパーツでのみ必要です。他はなくても大丈夫なようです(AnkerMake Studioでwarningが出ますが)。また、M5CのAnkerMake Studioはデフォルトではinfill densityが10%となってますが、15%かそれ以上に変える必要があります。これはExpertのところをクリックして、StrengthのところにSparse infill densityがあるので、そこの値を変えます。ただ薄い部品では変更しなくても大丈夫です。そしてスライスを始めます。
 印刷を開始すると、温度を242度に設定し直します。非常に薄いパーツは印刷直後に剥がそうとすると曲がってしまうので、冷えてから剥がします。実際に印刷すると、内ネジ部分がイマイチなのと、横穴が上下に潰れ気味になるのですが、何とか使えそうなものができました。印刷したパーツを上の写真に示してます(カメラケースパーツは既に組み立てたので映ってません)。本体ケース(上、下のどちらも)が一番時間がかかりますが、1つで7時間くらいかかりました。

soldering-iron-for-insert.png

 パーツが出来るとインサートナットを埋め込む必要があります。インサートナットは真鍮で出来ていて丈夫なので、Sunscanでも多用されています。インサートする場所はマニュアルに説明があります。埋め込み用にハンダごてと専用治具を購入しました(右の写真)。インサートナットをハンダごてを使って加熱して治具を使ってインサートナットを挿入します。インサートナットは沢山必要ですが、十分在庫なかったので一部だけテストで埋め込んでます。残りは注文中で、それらの到着待ちです。内部で使う六角穴付きボルトとワッシャは黒色のものを用意します。それ以外にはSVBONYのヘリカルフォーカサー(SV161)が必要です。

Sunscanの光学パーツの入手

 光学パーツについてはShelyak InstrumentsでSunscanに必要な光学パーツセットを販売してます。スリット以外はエドモンドとSVBONYでも購入できますが、今回もこちらは注文しました。到着待ちです。SolEx Proの時は2週間弱で届きました。関税取られます。

Raspberry Pi 4B、HQカメラとSunscanOS等の導入

 Raspberry Pi 4B 4GBは既に持っていたのでそれをそのまま使いました。HQカメラ(Cマウント)はなかったので買いましたが、あまりどこも在庫がないようでした(M12マウント用はあるのですが、そのままでは使えません)。SunscanではバッテリでPi 4Bを動かすのですが、まだバッテリは買ってなく、電源アダプタで取り敢えず使ってます。バッテリを使うとSunscanからは1つもケーブルが出てないので、野外などでは特に便利に使えます。マイクロSDは128GBのものが必要です。Class 10, U3 V30かそれ以上のもの。これはPi 4Bで使えるマイクロSDをウェブで検索した方がいいかもしれません。Raspberry Pi 5は使えるようなのですが、一部ソフトで不具合が出ます。またバッテリも5対応のものはまだないようです。
 Sunscan自体はまだ出来てないのですが、SolExのページの方で紹介したように、既にRaspberry Pi 4BにSunscan OSをインストールしてSolExを使って観察をテストしてます。スマートフォンにもSunscanのアプリを入れると、Raspberry Pi 4Bとwifiで接続できて、画像を撮ることができます。実際太陽画像も撮ることができています。
 SunscanOSを動かすのは簡単で、まずは マニュアル 通りにRaspberry Pi ImagerとSunScan OSをPCにダウンロードして、ImagerをPCで動かして、SunScan OSをマイクロSDメモリに書き込みます。そのマイクロSDメモリをPi 4Bに挿入して、カメラを接続して、Pi 4Bに電源を繋いで起動します(起動スイッチはありません)。
 次にiPhoneにSunosアプリをApp Storeからダウンロードします(Android版もあるようです)。wifiでSunscanに繋いで、iPhoneのSunScanアプリを起動すると、firmwareのupdateをするように言われるので、一度wifiをインターネットに繋ぎ直してfirmwareをダウンロードします(自動)。1.7から1.9へアップデートされました。再度wifiでSunscanに繋いで、iPhoneのアプリを起動して、Connect Cameraをタップします。左端の上から2つ目のアイコンをタップするとカメラ画像が見られます。ただしアプリの使い方についてはあまり説明がありません(調節のマニュアルで調節のための説明がありますが)。
 なおHQカメラとPi 4Bはリボンケーブルで繋がっているため取扱に注意が必要です。SunscanではPi 4BのケースがSunscanに取り付けられるようになっています。
 SunscanではSky WatcherのAZ Pronto経緯台にVaonisのVesperaの三脚を使ってます。経緯台に固定できるようにSunscanの底にdovetail式のアダプタを3Dプリンターで作って取り付けます。しかし私は手持ちのマンフロットの微動三脚を使う予定です。この場合はそのアダプタが使えないので、アダプタは別途作る予定です。単に板にSuscan固定用のカメラネジ用の穴を2つ開けて、三脚固定用のカメラネジを1つ切るだけです。

撮影方法

 まだSunscanは完成してませんが、SolExを使ってSunscanの撮影の手順は大体理解しました。まずスリットに太陽像を導入して、Halpha線をカメラ側のヘリコイドでハッキリするように合わせます。Sunscanの側面には簡易ファインダーがあるので、それを使います。実はスリットに太陽が来てなくてもフラウンホーファー線は見えるのですが、太陽像がスリットに来ると強度が圧倒的に違うのですぐ分かります(ゲインは最初1にする)。Halpha線が水平になるようにHQカメラを回転します(この時、グリッドをタップして十字を出しておくと合わせやすい)。Halpha線はドップラー効果のために場所によって上下に少しずれていて、このウネウネがよく見えるのがベストなフォーカス位置となります。時々上下に走る黒いバンドは黒点によるものです。そして左右の太陽の縁がはっきりするように望遠鏡側のフォーカスを合わせて、Halpha線の場合は赤のチャンネルにして、強度が飽和しない程度にゲインと露光時間を調整します(スマイルマークになればOK)。露光時間の範囲はアイコンを長めにタップすると変わります。そして右側にあるクロップアイコンをタップ。上下矢印アイコンをタップして、Halpha線がクロップした領域のほぼ中央に来る様にします。そして三脚(または経緯台)の微動を使って太陽の進行方向の少し前に持っていきます(フラウンホーファ線が消える)。そして録画ボタンをタップします。縁のプロミネンスなどが見えるので、太陽の端よりはもっと前からスキャンを初めて、太陽の端が通り過ぎてもしばらく待つ必要があるそうです(なので実際は4〜5分スキャンする)。この辺りの操作方法は こちらのページ からリンクしているyoutube動画を見るといいです。
 スキャンを終えるには録画ボタンを再度タップします。次に左側のサムネールのアイコンをタップして、そこで撮った画像(画像自体はまだ出てませんが)の矢印をタップしてしばらく待つと画像処理された画像が3つ表示されます。これらはiPhoneにダウンロードもできます。さらに画像処理を後でカスタマイズすることもできます(そちらの方が処理画像の種類がもっと多くて黒点の画像などが追加されますが、処理には1分程度かかります)。結構難しいのはスキャンの途中で太陽がスリットからはみ出さないようにすることで、これには望遠鏡を適切に回転させておく必要があります(スリット長手の垂直方向と太陽の進行方向を一致させる)。またスキャンの最初は太陽面の進行方向の少し前に持っていく必要がありますが、マンフロットの微動付き三脚で一応可能でしたが、操作性はあまりよくないのであれば経緯台の方がいいでしょう。
 まだよく理解してないところですが、そうやってSolExで撮った太陽像(raw画像)は丸くありません。処理で丸くしてくれるのですが、丸く撮るには撮影時の露光時間の調整が必要です。そのあたりはSolExの方に丸くなるための 計算式 が載ってます。私の計算ではSunscanでは74 msになりましたが、Sunscanが完成したらそのあたりを試してみます。