ESPressoscopeはカメラ付きのESP32ボードを利用した自作できる小型顕微鏡です。オープンソースになっています。元々Matchboxscopeでしたが、最近はESPressoscopeと呼びます。ただウェブ上ではMatchboxscopeの方がよく見られます。私はやはりオープンソースのOpenFlexureMicroscopeを以前作ってますが、こちらと比べるとESPressoscopeはもっとコンパクトで(上の写真でエスプレッソカップくらい)、安価に作ることができます。一方、OpenFlexureMicroscopeでは試料のXYZ移動はモーターで駆動可能でしたが(自動フォーカスもあり)、こちらは全て手動となります。また拡張的なことはあまりできませんが、一方で分光器(ESPpectrometer)、水中撮影(Anglerfish)、マイクロ流体観察(Fluidicscope)のバージョンも存在します。ESPressoscopeは予算的には3〜4千円くらいでしょうか。ケース部分などは3Dプリンターで作ります(STLファイルが公開されています)。OpenFlexureMicroscopeのローコスト版と同じで、ESP32ボード付属のカメラレンズを外して対物レンズに流用するので、レンズは別途必要ありません。
ESPressoscopeはハード的にはESP32-MBとESP32-CAMボードを使ったものと、XIAO ESP32S3 Senseを使ったものが存在します。後者は新しく、コンパクトで少し性能が高いようです。値段的には後者が少し高くなります。私が今回作ったのはXIAO ESP32S3 Senseを使ったものです。秋月電子通商で買いました。
ESPressoscopeについてはPlos Oneに論文が出ています。
ESP32-MB+ESP32-CAMボードを使って作る場合はESPressoscopeのサイトをベースにすればいいのですが、XIAO ESP32S3 Senseの場合はちょっと情報がまとまってない感じがありました。一番いいのはVittorio Saggiomoさんの作成動画とそれに対応した3Dプリンター用STLを使うことです。基本その動画を見ながら作れば問題ないと思いますが、以下3つ注意点があります。
1つ目の注意点はXIAO ESP32S3 Senseのカメラレンズはサイズが2つあるようで、購入したレンズに合わせたレンズホルダーを使います。Vittorio Saggiomoさんのところでは大小2種のレンズホルダーが用意してあります。私の購入したものは小さい方のサイズでした。それとカメラ位置を安定させるために(実際使わなくても)マイクロSDカードを入れておくといいです。適当なものがない場合はカードのダミーSTLもあります。
2つ目の注意点は、ESPressoscopeは試料台を浮かせておいて、ネジ3本で締めてフォーカスを合わせます。浮かせるためにバネまたはネオジム磁石を使うので、まずはどちらを使うかを選択する必要があります。Vittorio Saggiomoさんの動画は磁石を使うケースですが、私はバネを使いました。バネは6 mm径で長さ15 mmくらいが適当でした(アマゾンで購入、3個必要で5個入りを買った)。なお磁石を使う場合は試料上にも磁石を1個置いて、試料固定用として使うようです(なので5個必要)。また、この3つのネジをインサートナットを使うか(その場合ちょっと大きめの穴になる)、ネジを捩じ込んで(タップを使ってもいいが)ネジを切って使うかによって、2種類のベースのSTLがあります。Base_inserts.stlがインサートナットを使う方で、Base_no_inserts.stlが使わない方です。
3つ目の注意点はカメラレンズを外すところです。この顕微鏡の場合はカメラレンズを外して、センサーから少し距離を置いて配置することで顕微鏡として使えるようにしてます(OpenFlexureMicroscopeのローコスト版も同じ原理)。そのためカメラレンズを外さないといけないのですが、適切なプライヤーを使わないとプラスチックレンズを傷つけてしまいます(一応シールが貼ってありますが)。私は傷つけてしまいました(2個買っておいて正解)。仕方ないのでVittorio Saggiomoさんが動画で使っているプライヤー(Knipex Cobra XSと思われる)を買ってしまいました(XIAO ESP32S3 Sense1個分より高い…)。一応それで外すことができました。
ESP32-MB+ESP32-CAMボード版は作ってないのですが、作成動画を見る限りはほぼ同じように作ってました。もちろんSTLファイルは専用のものを使う必要があります。
照明なのですが、ESP32-MB+ESP32-CAMボードの場合はボード表面に明るい白色LEDが元々あるので、その光を利用する形で潜望鏡的なものを作って、上側に一度反射させてそれを試料に当てています。3Dプリンターで印刷されたものは反射率がよくないので、銀のスプレーやアルミ箔を貼っているようです。一方XIAO ESP32S3 Senseの場合はそのようは白色LEDはないので、別途照明が必要となり、安い小型LED(電池、スイッチ込み)が使われています。私はアマゾンでLIHAOのミニLEDライト昼光色を買いました。ただ1個だけで売ってなくて15個入りを買いました…
下の写真は一応完成したもの(これはバネを使っている)。本体から細い線が出ているのはwifiアンテナへ繋がる線です。
動画のようにESP32S3 Senseを組み込む前でもいいですが、ハード完成した後でも可能です。インストールは動画通りなのですが、Chromeブラウザ(Edgeでもいいようです)を使うので、Chromeをインストールしてない方はまずChromeをインストールします。そしてUSBケーブルでESP32S3 SenseとPCを接続します。そしてChromeでファームウエアサイトにアクセスします。画像でESP32S3 Senseを選んで、Connectボタンをクリックします。そうするとシリアルポートの選択画面になります。USB JTAG/serial device unit(cu.usbmodem101)となっているものを選びます。そうすると接続されて、ダイアログが出てくるので、INSTALL ESP32S3-XIAOSENSEをクリック、確認が出てくるのでINSTALLをクリックします。インストールにはCH340ドライバーが必要ですが、これがない場合はインストールするように誘導されます。そこで中国語のサイトに飛びますが、CH341(CH340も含む)をダウンロード(下载)して、インストールします。これで再度インストールすると今回は最後まで行くはずです。
それでwifiを見ると、私の場合は新たにopenUC2xSeeedがあったのでそれを選択します。そしてChromeで192.168.4.1にアクセスすると操作画面になるはずです。そのままでは画像は見えません。下側のStart Streamをクリックすると画像が見えるはずです。試料を試料台に載せて、照明をONにしてください。最初画面のResolutionが低いので上げます。3本のネジを回してフォーカスを合わせます(なるべく傾かないように移動する)。明るさやコントラストなども調整できます。そこそこ綺麗に見えてました(下の画像)。最初MacからChrome, Firefoxで見てましたが、iPadのSafariでも見えました。USB出力のバッテリと合わせれば外の展示でも使えそうです。来年のJpGUの研究所ブースに置いているかも。
ESP32S3 Senseはコンパクトなために結構高温になるらしいので、そこが不安なところです(まだ短時間でしか使ってません)。下側を嵩上げして、付属してきた放熱板をつけるか、ミニファンを取り付けたいと思ってます。
ところでレンズを壊してしまったXIAO ESP32S3 Senseをどうしたものかと考えていたら思い出しました。以前OpenFlexureMicroscopeを2台作っているのですが、1台はローコスト版なのでHQカメラ付属のレンズは対物レンズに流用してますが、もう1台の高級版?は対物レンズは別途用意したので、そのレンズは保管してました。それを見つけてESP32S3 Senseに付けてみたところピッタリ入りました!しかしそうするとHQカメラ付属のレンズ外し工具がXIAO ESP32S3 Senseにも使えた可能性が出てきます。みた感じレンズの形状は同じ。Knipexのプライヤーを買う前に試せばよかった…HQカメラ付属レンズの焦点距離が同じかどうかは不明ですが、ESPressoscopeがもう1台作れそうです。しかしレンズなしでも分光装置でのちょっとした顕微像のモニターとかに使えそうです。センサーサイズは小さいのですが、コンパクトでwifiでも使えるし…