オートコリメーターの作成 の履歴(No.2)


オートコリメーターの作成(2024/06/27)

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 オートコリメーターは光学系の調整に必要な道具なのですが、これまでは使わずに何とか調整してましたが、ないと不便なことも多くなったので、今回作成しました。作成にはThe PULSAR Engineeringを参考にしました。この方はOpenRamanのサイトもやられています。
 オートコリメーターでは、十字ターゲットから出た光がビームスプリッターに入って、2つのパスに分かれますが、1つは90度反射されて、50 mmのレンズを通って、カメラのCCD面で焦点を結びます。もう片方はビームスプリッターで曲げられる真っ直ぐ進み200 mmのアクロマートレンズ(今回はアポクロマートの200 mmがあったのでそれを使っている)を通過して、(調整が済んでいると)コリメートされ、それがミラーで反射されて、再度レンズを通って集光するビームはビームスプリッターを真っ直ぐ進んで、十字ターゲット上に像を作ります。この像は先の50 mmレンズ+カメラで観察されるので、2つの十字がUSBカメラ上に映ることになります。明るい十字はビームスプリッターで90度曲げられた方で、暗い十字はミラーで反射された方です。カメラ位置とレンズ位置を調整して両方がフォーカスしている状態にすると、200 mmのレンズから出た光はコリメートされていることになります。オートコリメーターとして使う場合は、調整用に使った50 mmのレンズ等は外して、ビームスプリッターの逆側にカメラを移動します(上の図は移動後の状態)。

autocollimator-cross-LED.png

光学系の作成

 全てソーラボのパーツで、30 mmのケージを使って組みました。オートコリメーターは動態で保存しておく必要があるので、専用に部品を確保しておきます。まず調整のために光が透過する十字のターゲットがあると便利なので、型番R1DS3Nのnegative crossline test targetを使いました(右の写真)。これは十字の部分のみに光が通るようになってますので、見やすくなります。その後ろにLEDからの光を拡散させる板(DG10-1500)を置きます。これら2つをSM1のレンズ筒に組み込んで、ケージプレートに固定しました。
 その背後にLEDが来ます。LEDは自作してもいいのですが、今回はこれもソーラボのLEDモジュール(LEDMT1F)を使いました。これはLED素子自体をこれに差し込めるようになってます。なおモジュールは2種類あって、使う抵抗が少し違います。今回は赤LEDのLED630Eを使いました(5個セット)。LED素子のリードの足の長い方(プラス)は8 mm、短い方を6 mmに切っておきます(モジュールに差し込んだ時にちょうど収まるように)。電源はUSBケーブルから供給します。前方にSM05のオスネジがあるので、SM05のメスネジを持つケージプレート(CP32/M)にねじ込んでケージ内に固定しました。
 ビームスプリッターは既に持っていたものを使っています(CM1-BS013)。レンズ2種(200 mmアクロマート, 50 mm)もレンズ筒に収めて、ケージプレートに固定します。50 mmレンズの前には可変絞りを置いています(なくても大丈夫かも)。50 mmの方はアクロマートでなくてもOKです。
 25か1インチ直径のAl蒸着ミラーは今回はケージプレートに直接固定しました。場合によって十字が重なることがあって、キネマティックマウントに載せて角度を調整したいところですが、大体何とかなるのでそこまでする必要はありません。USBカメラにための長さ調整が結構大変だったので、ケージロッドは長さが異なるものが色々とあった方が対応しやすくなります。
 検出部は肉眼で覗くようにしてもいいのですが、レーザーを使ったものの調整などもあるので、USBカメラで見ることにしています。手持ちの古いUSBカメラを使っています。カメラはCマウント(メスネジ)なので、CマウントのオスネジとSM1のオスネジが一体となったアダプタでケージプレートに固定しました。今回カメラの向きはどうでもいいので、単純なアダプター(SM1A39)でいいと思います。それらをケージに組んでいきます。レンズ位置はノギスで大体合わせておきます。

装置の調整

autocollimator-setting.png
autocollimator-cross-image.png

 作成したものが上の写真です。これは調整時の配置になります。50 mmレンズ位置は十字ターゲットから大体100 mmの位置に置いて、さらにそこから100 mmの位置にUSBカメラのCCD位置が来るように大体合わせます。これでまずカメラ位置を移動させて、明るい方の十字がはっきり見える位置を探します。そうしたらカメラ位置を固定します。次に暗い方の十字がフォーカスするように200 mmレンズ位置を移動させます。終わったらレンズをしっかりと固定します。調整中のパソコン画面を右に示します。
 私の場合、上記のやり方だと実際に使う配置にした時にフォーカスが合わせられない状況となりました。なので、そのような場合は先に実際に使う配置(一番上の写真)で200 mmレンズ位置の方を調整して、十字がフォーカスできるようにしておいて、200 mmレンズ位置を動かした分だけ十字位置も移動させて、それでもう1度調整から始めるとうまくいきました。
 オートコリメーターとして使う場合にはUSBカメラはビームスプリッターの反対の位置にレンズなし(絞りも不要)で取り付けます(一番上の写真)。レンズがないので距離的に短くなります。そして十字がくっきり見えるようにUSBカメラ位置を調整します。これが終わるとミラーは不要なので取り外します(一番上の写真はまだミラーが付いている状態)。これでオートコリメーターを使う準備ができました。

光学系の調整に使う

 主には2つの調整に使えます。無限遠調整とコリメート光を作る目的。
 無限遠調整:カメラ+レンズ系で無限遠にフォーカスするように調整したいことがよくあります。これまでは窓の外の遠くの物体を使ってやってましたが、オートコリメーターを使うともっと正確に調整ができます。この場合、オートコリメーター側のカメラは不要です。LED点灯は必要です。調整したい光学系を延長ケージロッドやプレートを使って、オートコリメーターの200 mmレンズの外側に取り付けます。そして調整したい光学系のカメラで十字がフォーカスするように光学系のレンズ位置を調整します。これで無限遠に調整できたはずです。
 コリメート光を作る:たとえば光ファイバー、ピンホールやスリットから入れた光をレンズでコリメートする場合に使えます。この場合はLED点灯は不要で、USBカメラが必要になります。調整したい光学系を延長ケージロッドやプレートを使って、オートコリメーターの200 mmレンズ外側に取り付けます。そしてUSBカメラで見ながら、光ファイバー端、ピンホール、スリットがフォーカスするように光学系のレンズ位置を調整します。ピンホール、スリットの場合は背後に光源が必要になります。また、強い光の場合はNDフィルターで光量を落とす必要があるかもしれません。