ラマン用ノッチフィルターSureBlockの調整方法の個人的メモ。SureBlockはOndax、現在はCoherentで販売されている低周波数まで使えるラマンノッチフィルターで、研究室には488 nm用が2枚あります(1枚だとOD4くらいなので、2枚あった方がいいのですが、透過率が60%台なので、散乱光自体は2枚使うと結構弱くなります)。対応するASEフィルターもあります(これは普段光路に入っている)。
SureBlockから回折した光を分離するために、SureBlockからスリット前の結像レンズまでの距離を20 cm以上とるか、空間フィルターを使う必要があります。うちの装置の場合は現状の配置では前者をクリアしているので問題ないですが、光学系を大きく変更する時は注意が必要です。
- まずはフィルターの切り欠き部分をスリットの向きに合わせるかどうかを決める。それによってキネマティクマウント(ソーラボのKM100)の取り付け方向も変わってくる。以下はスリットに合わせた場合。スリットと90度回転していても今の装置だとフィルターから分光器まで距離があるので(20 cm以上)、回折光が影響することはないと思う。実際以前はスリット方向に合わせてなくて、それで問題になったことはなかった。
- SureBlockは外して、ラマン分光装置を調整しておく。この時にはSemrockのラマン用のロングパスエッジフィルターを使う。ラマン散乱がちゃんと測定できるように調整しておく。
- 試料位置にミラーを置く。フィルターからの反射光を観察するためには、フィルターからの反射率も低いし、ASEフィルターも入っているとさらに弱くなるので、なるべくレーザー強度を上げるためにミラーを置いている。また、白い紙の中央に穴が空いたものを用意する(名刺とかがよい)。分光器のスリットを広げておく。
- 2枚SureBlockを使う場合は分光器のスリットに近い側に1つ目のフィルターを取り付ける。フィルター面を光軸に大体垂直にする。白い紙をレーザー光が穴を通るようにフィルター前のプレートか何かに取り付けて、フィルターからの回折光や反射光が見えるようにする。フィルターからは5つのビームが平面状に反射される(今のフィルター方向の場合は水平方向)。そのうち4つは回折光で、残り1つが中央付近の弱い反射光になる(R<0.5%なので弱い)。この弱い反射光を見つけて、それが入射ビーム側に戻る様にKM100のノブでyaw, pitch角を大体調整する。上下をz軸、光軸方向をy軸、前後をx軸とすると、yawはx軸周りの回転。pitchはz軸周りの回転になる。(フィルターが垂直になるように目で調整できるなら、反射光を使っての調整は不要なのかも?)
- yaw角を調整して減衰が最大になるようにする。少なくともND3くらいになるはず。
pitchとyaw角を変えて、最大の減衰になるように調整する。最適なpitch角はyz面から±0.25度以下である。最適な調整がなされたら、ノッチ波長位置はyaw角の調整だけで変えられる。yaw角は回転方向どちらでも調整できる。
- 2つ目のフィルターを取り付けて、同様の調整をして、最後両方で最大減衰になるように調整。