OpenFlexure Microscopeメモ(作成2025/01/19)(最終更新2025/01/20)
準備中のパーツ類(全部ではない)
OpenFlexure Microscopeについて
OpenFlexureMicroscopeはflexure(たわみ)を利用した試料移動メカニズムを採用した、デジタルカメラで画像を撮るタイプの顕微鏡です。ステッピングモーターでXYZ方向の試料移動が自動化されています。この顕微鏡は本体部分は3Dプリンターで印刷することができます。3Dプリンターでは金属のような精密な加工はできないし、材料は変形もしやすいので、精密ステージのようなメカニズムはうまく機能しません。そのためにflexureを利用して変位させるのがこの顕微鏡独自のアイデアです。これらの作成方法等は公開されており、誰でも作ることができます。基本は倒立型有限光学系の透過顕微鏡ですが、色々なバリエーションが作られています。flexureを使った移動機構の説明はRev. Scientific Inst.の論文が分かりやすいと思います。それとbioRxivの論文も。どちらもオープンアクセスです。
制御にはラズパイ(Raspberry Pi)を使ってます。顕微鏡制御のみラズパイにやらせて観察はPCでするか、ラズパイで観察まですることもできるようです。後者の場合はラズパイ4Bが必要だと思います。標準ではラズパイの公式カメラを使って試料を観察します。
OpenFlexure Microscopeの作成
私は顕微分光装置の一部として顕微鏡部分を作ることがよくあるので、この顕微鏡に興味を持ちました。機構から見てあまり重いものは載せることはできなさそうですが、試料部の走査などで参考になるところがありそうです。そこで作成してみることにしました。
作成しているのは最新版ver. 7のものです。とりあえずは基本の倒立型で透過照明の顕微鏡を作成してますが、無限光学系や反射、偏光ができるものへの改造も考えています。XYZ軸はステッピングモーターで駆動します。ステッピングモーターでネジを回転させて、そのネジがレバーを押して、そのレバーがflexureを押して変位が生じるようになってます。
作成に必要な主要パーツを含むキットが複数のベンダーから現在入手可能となってます。ちょっと調べた感じでは、TauLabかIO Rodeoがよさそうでした。IO Rodeoでは3Dプリントしたパーツを含むキットが200ドル、含まないものが135ドルで売られています。これらにはラズパイカメラ、照明部分とSangaboardが含まれています。一方、ラズパイ4Bと対物レンズとチューブレンズが含まれていません。なおlow cost版はラズパイカメラのレンズを対物レンズに流用するので、別途対物レンズは必要ないようです。
私はキットではなく自分で作ることを選びました。これはキットに含まれるパーツの一部を既にいくつか持っていることがあります。さらに照明部分とモーターのラズパイ対応ドライバーボード(Sangaboard)は既製品をキットを売っているところで買った方が簡単なのですが、それらも自作で対応することにしました。ただ照明部分とモータードライバーを自作する場合は、標準の組み立て方法ではなく、それらの部分については"Customisations and alternatives"の"No access to the ilumination PCB"と"No access to the Sangaboard"のところを参照して同等品を作る必要があります。

印刷した本体部分
**OpenFlexure Microscopeの3Dプリントパーツの印刷
手順では最初にflexure部分をテスト印刷することが要求されます。これで自分の持っている3Dプリンターで印刷可能かどうかの判断ができます。比較的小さいパーツでそれほど時間もかからないので、プリンターの適切な条件を見つけるためにも使えます。これがうまく出来ない場合はキットを買うか、印刷を外部に依頼する必要があります。私の場合はAnkerMakeのM5CでPLA+フィラメント、0.4 mmのノズルで印刷してみましたが、特に問題はなかったので自分でパーツを印刷することにしました。最初に0.2 mmノズルを試しました。表面などは綺麗になるのですが、印刷に時間がかかりすぎるので止めました。
なおいくつかプリンター設定を変える必要がありました。まずサポートを使いません。スライサーでサポートを使うように警告が出ることがありますが、無視します。また本体部分のみはbrim(つば)自体がstlに含まれているので、brimを無効にします。layer heightは0.2 mmに、Slice gap closing radiusは0.001 mmに設定。ちょうど白と黒のフィラメントを持っていたので、本体側は主に白、スタンド側とギアは黒で印刷しました。なお対物レンズを取り付けるパーツは必ず黒で作る必要があります。
一応必要なパーツは印刷できました。オーバーハング部分(中空に浮いている部分)がサポートなしでうまく印刷されるか気になりますが、フィラメントの垂れ下がりが本体とスタンドで一部ありましたが、装置の機構に影響を及ぼすほどではないようなので、これでOKとしました。
印刷された本体を触ってみると、flexureをどう使ってX,Y移動、Z移動させているかがよく分かります。
OpenFlexure Microscopeの他パーツの入手
顕微鏡作成の手順の最初のところにパーツリストがあります。照明部分とSangaboardを使わない場合にはそこに含まれていないパーツも必要になります。また倒立型でないタイプや無限光学系などでは違うパーツを使ったり、部品が増えたりするので要注意。
- ラズパイ4B 2 GB or 4 GB (8 GBメモリ版はダメなよう)、またラズパイ5は持っているのですが、現状使えません。なので4B 4GBを秋月電子通商で購入。
- ラズパイ 4B用電源 これは持っていたのでそれを使う。
- ラズパイ用64 GB microSD これにOSを入れる、アマゾンで性能のよいものを購入。
- ラズパイ カメラ ver. 2.1 これは以前買っていたのでそれを使う。カメラはレンズ付きだが、レンズは外して使う(高分解版)。
- ラズパイ カメラ付属のケーブルは短く、30 cm長さが必要。これはアマゾンで見つけて購入。
- ステッピングモーター(28BYJ-48)+ドライバーボード3組 これは1組持っているので2組をアマゾンで購入。
- Arduino Nano これはSangaboardを使わない場合のみ必要。注意としてはオリジナルのNanoを買うこと。Nano EveryやNano互換は形状に違いがあるので、3Dプリンターで印刷したボードに取り付けられない!秋月で購入。
- 40x有限系RMS対物レンズ これはIO Rodeoで売っていたがちょうど品切れ中だった。同じものがエドモンドにもあったが割高。同等品で安いものをアマゾンで見つけて注文。
- 1/2インチアクロマートレンズ f=50 mmレンズ これはいつも光学部品を購入しているソーラボで購入。AliExpressなどでもっと安く入手できるはず。
- 暖色白LED (101736) 5 mm x1 これは秋月電子通商で適当なものを購入した
- 150 ohm抵抗 x1 これはLED用。在庫なかったので秋月電子通商で購入した
- ポリプロピレン板白0.5 mm以下 これはLED光を拡散するために使う。白い半透明なものなら材質は関係なく使えるようだ。私はアマゾンで売っていた塩ビ板を試すつもり。しかし探せば実験室に何かありそうだが。
- PMMA製f=5 mm, d=12.7コンデンサーレンズ これはLED用のレンズでAliExpressで注文
- light oil 潤滑油なら何でもいいと思うが、指定のものをアマゾンで見つけたので注文。
- バイトンOリング 30 mmx2mm3個 バイトンと同じFKMのものをアマゾンで見つけて購入。
- M3真鍮ナット x3 これはホームセンターで入手
- M3ステンレスナット x14 これは在庫あった
- M3ステンレスワッシャーx8 これも在庫あった
- M3x10 mm ステンレス六角穴ボルト x11 これはホームセンターで入手
- M3x25 ステンレス 六角頭ネジ x4 ホームセンターになくアマゾンで注文
- M4x6 mm ステンレスボタン頭ネジ x6 これもホームセンターになくアマゾンで注文
- No.2 6.5 mm ボタン頭タッピングネジ (d 2.2 mm l= 6.5 mm) x16+2 これもホームセンター、アマゾンで見つからず、AliExpressで注文
- 配線で使う2ピン用コネクターハウジング(112151)、ケーブル用コネクタ(112327)、ケーブル外径1.36 mm(106755)、熱収縮チューブ(106789と108988)を秋月電子通商で購入。
- 工具はほとんど持っているものが使えるが、ケーブル用コネクタの精密圧着ペンチがなかったので、これも秋月電子通商で購入(117532)
()内の数字は秋月電子通商の販売コード。ちゃんと計算してませんが、3〜4万円程度かかるようです(入手するレンズの質と値段で変わる)。
OpenFlexure Microscopeの組み立て
現在(2025/01/19)まだ届いてないパーツがあるので、それらを待っているところ。