ABC相問題
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ABC相問題
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1 (2025-08-28 (木) 08:55:30)
2 (2025-08-28 (木) 08:55:30)
ABC相問題
(2025/08/28)
「
ABC相問題
」は私が勝手につけた名前であり、数学における「ABC問題」をもじっている。高圧含水マグネシウムケイ酸塩相のA、B、C相は水素から見ると似たような局所構造を持つ。
*1
特にBとC相はさらにH環境以外にも構造的な類似性が認められる。DFT計算を行ったところ、この3相には水素結合に関して奇妙な共通点があることが分かった。正確にはA相については2つあるH席のうち、H1がそうであり、H2は奇妙な振る舞いはしない。AとC相についてはKanzaki(2023)で既に報告しているが、最近B相のDFT計算を行なったが、B相の水素(2席)も同じであった。下の図にはA、B、C相のOH伸縮振動数の圧力変化を示している。重水素で2席の水素の片側を置き換えた計算なので、ほぼ相関場分裂の影響を受けてない振動数である。A相のH2を除くとほぼ同じ圧力依存性を示している。
通常水素結合を含む酸素ー酸素間距離(O-H__O)が短くなると水素結合距離(O__H)が短くなり、一方で共有結合しているO-H間は長くなる相関がよく知られている。これは単純なbond valence計算でも示すことができる。そして酸素ー酸素間距離が減少するとOH伸縮振動数は低くなる。これもよく知られている相関である。水素結合を含む酸素ー酸素間の圧縮は圧力印加によっても生じ、OH伸縮振動数の低下が期待される。下図に見るようにA相のH2については確かにこの相関に従っているが、それ以外のA、B、C相の水素については従っておらずほぼ一定であることが分かる。これらの水素では共有結合のO-H間は圧力と共に少し短くなっており、これも知られている相関とは逆になる。逆になるのでOH伸縮振動が既存の相関と合わないのだろう。このようにA、B、C相における水素の振る舞いは水素結合でよく知られている相関とは合わない。これを
ABC相問題
と呼んでいる。1つだけ注意しておくと、従来の相関は常圧構造を多数集めて得られる相関であって、単一相の圧力依存性の相関自体ではないことである。しかしそれでも簡単な計算からは圧力依存性を含む場合も従来の相関に従うと予想される。
ABC相問題
をしばらく前から考えているが、単純明快な説明ができず、多重水素結合やSi-H間の反発などいくつかの相互作用の結果だと現在のところ考えているが、スッキリ解決したと言えないのが現状である。さらに考えるつもりではある。
ちょっと話がずれるが、A、B、C相では相関場分裂が見られる(Kanzaki, 2023)。A相においては低圧では相関場分裂は弱いが、上記のようにH1とH2の振る舞いが大きく異なるため、圧力で相関場分裂が大きくなり、ある圧力で最大になり、それ以降はまた相関場分裂が低くなる。OH伸縮振動もこの影響を受けており、Liuら(199?)が高圧ラマン分光測定で観察したOH伸縮振動数の奇妙な振る舞いはこの圧力誘起の相関場分裂で説明できる。C相においては常圧から強い相関場分裂を示している。これらは既に報告済みである(Kanzaki, 2023)。最近B相についても計算を行なったところ、B相はAとC相の中間の強さの相関場分裂を示すことが分かった。
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なぜC相と呼ぶかというとC相の方が先に報告されているから当然であり(Kanzaki, 1993)、ABC問題にこじつけるためではない。