角度分解偏光ラマン分光 の履歴(No.1)


角度分解偏光ラマン分光測定できるようにする(2024/10/02)(更新2024/10/02)

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経緯

 試料に入射するレーザーの偏光面角度を任意に変えて測定できるように顕微ラマン分光装置を改造中です。その方法をメモしておきます。かなり以前から、レーザー装置から光が出たすぐ後に手動回転マウントを置いて、そこに1/2波長板を入れて、光を透過させて偏光方向を変えることはできました。ただこれは偏光方向をレーザーから出てきたままか、それを90度回転させるかの2つのパターンで測定することを想定してました。当時CCl4を測定して、確かに教科書通りの偏光解消度の結果になることは確認しましたが、それ以上の測定はほぼ行いませんでした。アナライザーにはグランートンプソン偏光子を使ってました。今回は偏光面角度を任意角度に変えて(角度分解)測定できるようにしようと考えています。

偏光面角度の制御

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 偏光面角度の制御には他ページ:ELL14をpythonで制御するで紹介しているソーラボのELL14回転マウントを導入しました。ここに1/2波長板を入れます(右の写真)。1/2波長板は直線偏光が光軸と一致すると偏光方向はそのまま、1/2波長板を回転して光軸から傾けた場合は、その角度の2倍分偏光面が回転します。なので1/2波長板の角度を制御することで偏光面角度を制御できます。そしてそれを対物レンズの上に設置しました(一番上の写真がその状況です)。ここに設置する利点は光が入射時と散乱光が2度通過することです。そのために分光器側には常に同じ偏光がいくことになります。また偏光面をこちら側で制御することで試料自体を回転させる必要がありません。

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 アナライザーにはグランートンプソン偏光子を使います。このグランートンプソン偏光子はかなり前に買ったものですが、問題ないようでした。グランートンプソン偏光子は長くて場所を取るのですが、偏光度が高いところと、透過率がよいことが利点です。グランートンプソン偏光子は手動の回転マウントに取り付けています(右の写真)。不安なところは90度回転した時に光軸がずれることですが、使い方としてはグランートンプソン偏光子は0か90度で固定しておいて、ELL14回転マウント側で角度を少しづつ回転させて測定するために相対強度で比較する限りは問題ないはずです。
 ELL14回転マウントはUSBからシリアル制御できるので、pythonにシリアル制御モジュールのpyserialを導入してプログラムを書くと簡単に制御できました。これも他ページ:ELL14をpythonで制御するで紹介しています。さらにtkinterを使ってGUIインターフェースのpythonプログラムを作って回転できるようにしました。1/2波長板はELL14回転マウントに取り付けてますが、あまりきちんと角度を決めて取り付けができません。角度のoffsetは測定で決めて、offset分を補正して回転するようにプログラムを作ってます。現在はこのプログラムで偏光面を回転させて、ラマンスペクトルを測定しています。角度を変えながら自動的にラマン測定できればいいのですが、そこまではまだ出来てません。

テスト測定

quartz-HR.png

 水晶単結晶でテスト測定してみました。水晶の1000面を上にして、c軸方向を入射レーザーの偏光方向にしてます。グランートンプソン偏光子を入射レーザーの偏光方向と同じにします。この状態で1/2波長板を0から45度まで、5度刻みで変えてラマン測定しました。これは偏光面方向を0から90度まで10度刻みで変えていることになります。80 mWで60秒の積算。
 いくつかのピーク強度(実際には高さ)を角度に対してプロットしたものを示します。最も強いのは464 cm-1のピークです。まだ角度のoffsetを決めてなかったので、どうも10度ほどずれてますが、強度がcos(2*angle)の二乗の依存性を示しているように見えます。本当は積分強度を求めないといけないのですが、まだテスト中なのでピークの高さを使ってます。この依存性はラマンテンソルから得られる結果と一致しているようです。グランートンプソン偏光子を90度回転して同様の測定を行いました。モードによってはcos(2*angle)の二乗のもの、sin(2*angle)の二乗になるもの、さらにもう少し複雑な角度依存性が見られました。
 まだ結果をよく理解していないところがありますが、角度分解偏光ラマン測定の方はできているようです。