エアリースパイラル観察装置 の履歴(No.1)


水晶球のエアリースパイラル観察装置(2024/02/18)

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 展示室用にエアリースパイラル観察装置を作成しました。これはほとんど市販パーツを組み立てたもの。エアリースパイラルスコープは「きらら舎」さんのものを既に持っているが、偏光板は回転できない。エアリースパイラルだけでなく、旋光角度も測りたい、1/4波長板を外しての観察もしたいということで今回作成した。旋光角度自体は以前旋光計を作ったことがあるが、今回はその時のパーツをベースに作っている。現在展示室に置いているので、見ることができます(2024年4月以降、私は展示室と関係なくなります)。
 架台にはソーラボのU型ベンチを使用。その両側に偏光板を取り付ける。ソーラボで1インチ径の光学パーツを取り付けられるレンズ筒を売っているので、それに偏光板を固定する。レンズ筒にはSM1ネジが切ってあって、それはU型ベンチに取り付け可能となっている。下側の偏光板はレンズ筒使わないで、U型ベンチに埋め込むことも可能だった。レンズや1/4波長板もレンズ筒を使って取り付ける。レンズはf= 50 mm前後が適当。偏光板の片側は回転マウントに取り付けていて、360度回転ができ、副尺付きで精密な回転も可能なものを使ったが、副尺なしの方が安い。偏光で試料を見る時はこれだけで十分。光源は最初専用のものを考えたが、展示室には偏光実験用にトレース台を置いているので、それを光源として使用することにした。U型ベンチを立てて、点灯したトレース台の上に置くだけ。スマホの真っ白な画面を使うことも可能だったが、スマホ画面のピクセルがちょうどレンズで拡大されて気になる場合がある。
 レンズはエドモンドで買ったが、偏光板2枚と1/4波長板1枚は美館イメージングで販売されているものを使った。安価なシートを売っているので、そこから25 mm直径の打ち抜きポンチで打ち抜いて、レンズ筒に入れて使っている。シートの一部しか使ってないので、多量に余ってます。同様なものを作りたい方に譲渡しますので、必要な方は連絡ください。
 旋光角度(c軸に垂直に進む直線偏光は回転する)を測る時は光源側の偏光板の前(下)に589 nmバンドパスフィルターを入れる。この場合、c軸に垂直に切った薄い水晶板を使うことを想定。このバンドパスフィルターはナトリウムD線の波長に対応させている。この波長だと水晶板の厚みに対して、21.7度/mmだけ回転する。なので最初水晶板なしで消光角度を読んで、水晶板を下側の偏光板の前に置いて再度消光位置を読んで、その回転方向と差を求める。試料から光源に向かって観察しているとして、偏光板を右(時計方向)に回転して消光した時は右水晶。逆の場合が左水晶になる。ただ、水晶板が厚い(>4 mm)と偏光方向が半回転以上するので、判定が難しくなる。また、水晶球ではこの測定は難しい。

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 エアリースパイラルを見る時は、観察者側の偏光板の前(下側)に1/4波長板を入れて、偏光板の後にレンズを入れる(水晶球を拡大するため)。右の写真はこの配置の時のもの。水晶球で焦点が大体合うようにレンズ筒の前にスペーサー用の筒を適当に追加するか取り除く。589 nmバンドパスフィルターは外しておく(付いたままだとモノクロになる)。これで水晶玉を下側の偏光板の上において(実際には偏光板の上にガラス円板を置いて偏光板が傷つかないようにしている)、手で水晶玉を回転して、カラフルなスパイラル(エアリースパイラル)が見える位置を探す。黒いバンドが見えたら、その延長線上を探すとよい。エアリースパイラルが中央に見えるように調整する。渦巻きの向きが中央から外に向かって時計方向に回転しているなら右水晶、逆なら左水晶になる。スパイラルでなく同心円状に見える場合は上側の偏光板を少し回転してみる。スマホで写真を撮る時はレンズを外す方がよい。また、球に周囲風景の映り込みを防ぐ黒いカバーも用意している。右はこれで撮ったエアリースパイラルで、これは右水晶になる。
 水晶球の保持は「きらりビューアー」の時はクリップを自作したが、手で保持するのは面倒なので、黒いポリアセタール板から簡易CNCで筒状のものを削り出して、その上に置くようにした。これが唯一今回工作したもので、水晶球のサイズに合わせて大小2つ作った。これを下側の偏光板の上に置く。これだと水晶球を手で保持する必要がないので、観察が楽で、スマホでの撮影も簡単。
 エアリースパイラルが出現する理由については、大場・大橋による「右水晶と左水晶の区別」で詳しく解説されている。googleで検索するとpdfが見つかる。また、Mineralogical Society of Americaで公開されているSkalwold and Bassettの"Quartz: A bull's eye on optical activity"にも説明がある。こちらもpdfがフリーで入手できます。後者には水晶板の旋光性をうまく利用したモノクロメーター(どちらかというとバンドパスフィルター的に使われていた古い装置)の解説もあり、興味深く読みました。入手できないか探したのですが、見つかりません。共著者のBassett先生はDACによる研究で有名な方。quartz monochromatorについてAmerican Mineralogistに載った古い論文がフリーで入手できます。
 エヌズミネラルで長い人工水晶を買ったので、時間がある時にc軸に垂直にカットして、旋光度を測定できるようにする予定。

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